途中までは 『パイの物語』
2017/09/16
『パイの物語/ヤン・マーテル/竹書房』を読んでしまった。
いや、実に面白い物語だ。途中までは。導入では、少年パイの父親が経営する動物園にまつわる話、動物の実態に関する事例が紹介されて興味深い。途中までは。そしてパイが次々といろんな宗教にのめりこんでいく様子が語られ、ぐいぐい引き込まれる。途中までは。そして本編ともいえる冒険へと物語りは展開する。パイの一家と動物たちが乗った、インドからカナダへ向かう貨物船が事故で沈没。パイはやっとのことで脱出し救命ボートに乗り込んだ。だがそのボートにはベンガルトラ、ハイエナ、オランウータンも一緒に乗っていたのだ。獣たちとともに海に放り出されたパイのサバイバルが目に見えるような描写で繰り広げられ、ハラハラドキドキものである。くどいようだが、途中までは。
さて「途中までは」とは何か。後半、こんな文章が現われる。
ピンプー(クジラの名前)が卑劣な日本の捕鯨船に殺されたりしなかったらの話だが。捕鯨は憎むべき犯罪だ。
おや、っと思う。
そしてラスト。いかにも無能に描かれた二人の日本人役人が登場する。ここにきてこれまでの面白さが一気に興ざめに転じた。
何があったのかは知らないが、ヤン・マーテルはよほど日本人が嫌いとみえる。というより人種差別主義者だな。さらにヤン・マーテルは捕鯨を犯罪と断言する哀れな愚か者だ。
物語は本当に面白い。
が、こんなやつの本を読んではいけない。ということが読んでみてわかった。不愉快。