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ロマンはどこだ 『陽気なギャングが地球を回す』

      2017/09/26

2003年に出版された伊坂幸太郎の第3作、小生にとっても伊坂ワールド体験3作目に当たる『陽気なギャングが地球を回す/伊坂幸太郎/祥伝社文庫』は、4人組が銀行強盗を繰り広げる悪漢小説。伊坂幸太郎のことだからフツーの4人であるはずはない。嘘を見抜く名人、演説の達人、天才スリ、そして精確な体内時計を持つ女。首尾よく手中にした現金を、逃走中に横取りされた4人はその奪還を図るのだが…。

陽気なギャングが地球を回す (祥伝社文庫)

陽気なギャングが地球を回す (祥伝社文庫)

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伊坂 幸太郎
祥伝社
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いやー、楽しい。小生はこの手のコンゲーム物が大好きだ。微妙に臭わせるネタの数々を冒頭から満遍なく散りばめておいて、終盤それらがヒューッと集まってきてめでたしめでたしとなる。この上手さがたまりません。

最初に書いたように、これでようやく3冊読んだわけだが、本作はこれまで読んだ2作(『オーデュボンの祈り』『重力ピエロ』)と比べて、より「楽しさ」を味わうことができた。結末がスカッと痛快で、主人公たち4人のおしゃべりが溢れているからだろう。演説の達人である響野は、強盗に入った銀行で演説をぶつのが定例なんだけれど、このしゃべくりには聞き入って(読み入って)しまう。

そしてもう一つ指摘すると、救いようのないワルが登場しないことが挙げられる。ここまで読んだ3作の伊坂作品にはすべて凶暴な悪人が配置されている。『オーデュボン』の城山、『ピエロ』の葛城、そして今回は神崎。前二人は常軌を逸していて、これが読中の気分を微妙に滅入らせていた。これに対し、本作の神崎はまだ理解可能な悪人だ(それでもかなりのものだけど)。ここにも「楽しさ」を壊さない理由がある。

さて、恒例となっている繰り返されるフレーズは「ロマンはどこだ」。このリフレインについて、伊坂自身はYahoo!ブックスのインタビューで以下のように述べている。

何度も出てくるのは、僕がそういう、同じフレーズを繰り返すのが好きだから。文章を書くときに、起こっていることの描写だけだとつまらないじゃないですか。少し違うかもしれないけど、音楽のリフレインやお経と同じで、繰り返すことに意味があるとは思っているんですよ。…。同じフレーズが何度かあると“あそこで出てきたやつだ!”って思いますよね? そういうことに気がついた瞬間って、ちょっと幸せな気分になるじゃないですか。理屈じゃなくて、直観的に楽しい。本筋とは関係ないけど、僕にとっては大事なことなんです。

小生、世間からかなり遅れて伊坂幸太郎にはまったので、文庫で追いかけていけるところはありがたい。次は何にするかな。

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