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『「天才」の育て方』は秀逸なタイトルだ 『「天才」の育て方』

      2017/09/16

「天才」の育て方 / 五嶋節 / 講談社現代新書
「天才」の育て方 (講談社現代新書)
大阪のおばちゃんのしゃべりを聞いてあげる、『「天才」の育て方/五嶋節/講談社現代新書』はそんな本だ。著者は、バイオリニスト五嶋みどり、五嶋龍を育てたお母さんで、お二人を育ててきた思い出、数々のエピソードを披露してくれる。決して子育て論ではない、おばちゃん奮闘記であって、もちろんそこから何を読み取るかは百人百様なのだが。

そういう意味で、本書のタイトルはとてもよい。このタイトルを見て、まさか本当に天才の育て方が書かれていると思って読む人はいまい。「天才」の育て方なんてあるわけないのだから、“これはしゃれだな”とすぐわかるようになっている。当初、五嶋節さんご自身が考えられたタイトルは『くそったれ天才、アホンダラ神童』で、それを編集部が付け直したとのこと。剛速球がナックルボールに変化したようで、さすがプロの編集者だ。

巷には子育て論、教育論が溢れているが、何の根拠も検証もなく情緒的なものが多いと思う。例えば『子どもが育つ魔法の言葉』。理科の実験じゃあるまいし、こうこうこうすればこんな子どもができあがります、なんて法則が見つかることはない。そんなものがあるとすればそれこそ魔法だ。

話を戻して、小生は本書を面白く読んだ。おばちゃんのしゃべりは楽しいものだ。共感できる箇所も多々あったので、二つばかり書き出しておく。

マスコミやお役所というのは、個別に具体的に物事を考えるのではなく、一般論として抽象的に物事をとらえる傾向があります。「犯罪のない社会」「家庭を大切に」「親子のコミュニケーション」「美しい国」……。マスコミや行政は、より多くの人々、国民すべての人々に当てはまることをいおうとする傾向があるわけで、そうすれば言葉が抽象的になるのもしかたのないことかもしれません。しかし、私たちの生活は、けっして抽象的に成り立っているものではなく、きわめて具体的な行為の積み重ねであることを忘れてはいけないと思います。

マスコミ、評論家の総論、抽象論は放っておけばよい。自分自身にフォーカスしたポジティブで具体的な方法を考えることが大事。

(レナード・バーンスタインの言葉を引用して)
音楽家になりたい、と思っている人は大勢います。でも、そういう人は、音楽家になれない。音楽家になる、と決めている人だけが音楽家になれるのです。

決めなければ何者にもなれない!

 - 社会, 読書