新しいご自分の可能性に踏み出してはみませんか 『君たちに明日はない』
2017/09/16
冒険小説作家だと思っていた垣根涼介のちょっと違う一面を見せる『君たちに明日はない/垣根涼介/新潮文庫』は、リストラ請負会社に働く村上真介にまつわる連作短編集。読み進みながら、面白く感じたり、つまんねえのと投げ出しそうになったり、ちょこっと感動してみたり、起伏のある作品だった。
なぜそんなことになったのかを考えてみるに、主人公村上真介に魅力を感じなかったからではないか、という答が出た。計算、打算しながら生きているようなやつで、どうもいけ好かない。『「人たらし」のブラック心理術』なんてのを勉強したのか、生まれつきそんな能力があったのかしらないが、まあそんなやつだ。こんなやつがもし近くにいたら、あっちに行ってくれ、ってタイプ。
救われているのは、各話に登場するサブキャラクタ、要はリストラされる側の人間が妙に魅力的なこと。元バリバリ銀行マン、おもちゃ会社のオタク社員、峠を越えたコンパニオンなど、肩入れしたくなる人物が描かれている。
その対比を狙っているのだとしたら、うまいと思う。