もう一度やり直す道がある 『君のためなら千回でも』
2017/09/16
『カイト・ランナー』がすごい小説だということは噂で聞いていた。読んでみようかと思ったときには絶版になってしまっていたので、「まいいかと」放っておいた。そうしたら、早川さんが文庫で出してくれたじゃないですか。タイトルは変更されていて『君のためなら千回でも(上・下巻)/カーレド・ホッセイニ(佐藤耕士訳)/ハヤカワepi文庫』、早速読んでみた。
帯には、「世界を感動で包み込み800万人が涙に濡れた大ベストセラー小説!」とある。へーっ、そんなに泣けるのかねと読み始めたら……、それどころではない、おいそれと泣いている場合ではないではないか!
メインの舞台はアフガニスタン。そこがまだ平和だったころ、裕福な家庭に育つ少年アミールは使用人で大切な友ハッサンを見捨て裏切り、その後悔の念にさいなまれつつ時が過ぎていく。アフガニスタンは地獄と化し、ついにハッサンは命を奪われる。罪を贖うことを決意したアミールは過酷な試練に立ち向かう。
特殊な環境下における恐怖、悲劇のなか、どこにでも転がっているような罪を背負って生きていくことの苦しさからどうすれば解き放たれるのか。父と子、国家、民族、しきたり、戦争など様々な要素が重なって、重厚な物語を形成している。読み進めるほどに愕然として涙なんか出てこない。心を揺さぶられるお勧めの一冊だ。