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自由と国家と資本主義 『誰も知らない 世界と日本のまちがい』

      2017/09/16

誰も知らない 世界と日本のまちがい 自由と国家と資本主義暫定税率廃止だ、道路財源はどうするんだなどとレベルの低いしゃべりを繰り返している政治家やマスコミにはあきれる。自民党や地方自治体は「2.6兆円の財源をどうするんだ」しか台詞はなく全くの思考停止状態だし、民主党は当然のようにそれに対するビジョンを打ち出せない。「2.6兆円をどうするか」が問題なのではない、国をどうするかが問題なのだ。

自民党は何でもかんでも「ねじれ国会」のせいにするが、そんなの言い訳に過ぎない。福田首相のすべきことは「民主党さんお話しましょうよ」などとへらへらすることではなく、国民に期待を持たせる国のビジョンを打ち出し、総選挙に打って出ることなのではないか。今のままじゃ負けそうだ、などと考えているのなら、素直に民主党の言いなりになるべきだ。

ここにはそぐわない話題で愚痴ってしまったが、もやもやしているときは、大きなスケールを持った本を読むのも気持ちがよい。『誰も知らない 世界と日本のまちがい 自由と国家と資本主義/松岡正剛/春秋社』は、それにピタリの本だった。『17歳のための世界と日本の見方』の続編となる本書は、これまた便利なありがたい本だ。思想、経済、科学などを絡ませながら近現代史がコンパクトに整理編集されている。今私たちが生きている現在はどのようにして形作られてきたのかを知ることができ、例えば世界を席巻している「グローバル資本主義」がはたしてよいシステムなのかどうかを考えさせてくれる。自由とは、国民国家とは、資本主義とはいったい何なのか、改めて勉強してみましょう。

本書が気づかせてくれた重要なポイントの一つにオスマン帝国(オスマン朝トルコ)がある。オスマン帝国と聞くとはるか昔の話だとの印象、思い込みがあった。なんのなんの、帝国が滅亡したのは第一次世界大戦敗戦後の1922年、それからまだ86年しか経っていない。そしてこのオスマン帝国の滅亡が現代の民族問題の大きな源流の一つだったのだ。

ナポレオンの意味を知るもよし、ドイツ哲学の表面を撫でるもよし、いろいろな読み方ができる本書は、手元においてときどき読み返してみたくなる好著だと思う。

 - 社会, 読書