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ミステリ好きのおじさんなら気に入るはず 『九杯目には早すぎる』

      2017/09/16

九杯目には早すぎる (FUTABA・NOVELS) 『九杯目には早すぎる/蒼井上鷹/双葉ノベルス』『ミステリ交差点』で取り上げられていた蒼井上鷹のデビュー作。短編5作、掌編4作が交互に収められた作品集となっている。『交差点』で書評として紹介されていたのは『出られない五人』、『二枚舌は極楽へ行く』の2冊だが、せっかくならば初めから、ということで。

まずは、本を手に取って眺めてみよう。浅羽容子のカバーイラストがなかなか素敵である。バーのカウンターに曰くありげな女が一人(ひょっとして「見えない線」の森尾智恵?)、向こうに並んだボトルには1から9までに文字が。そして表題になっている掌編のタイトルがいい。『九杯目には早すぎる』なんて、とってもスマートだ。期待が膨らむ。

さて中身はというと、全編、一癖二癖あるサスペンス。一見日常そうだけどでどう見たって日常じゃないシチュエーションの中で、もう若くない男たちがあれよあれよとドツボにはまって行く。彩りは「酒」と「不倫」。おじさんは気に入りました。主人公の冴えない男たちが奈落の底へ崩れ落ちていく様が、プンプンと哀愁を放っている。著者は1968年生まれ、今年40歳。なるほど、わかるわかる。物語は二転三転、行き着く先にはアッというどんでん返しが待ち受けているのでお楽しみを。

実は裏で『カラマーゾフ』をちびちび読み進めているので、サクッと読める短編集を渇望していたところだったのだ。『九杯目には早すぎる』は、そんな私の状況にぴったりはまったスパイシーな一冊であった。

 - 小説, 読書