予感どおりに面白い 『予想どおりに不合理』
2017/09/16
『予想どおりに不合理―行動経済学が明かす「あなたがそれを選ぶわけ」/ダン・アリエリー、熊谷淳子訳/早川書房』がとても気に入った。というより、著者のことが好きになった。
本書は、13個の事例からなる行動経済学の紹介本。13のポイントをまとめると、こんなところだろうか。
- おとり選択肢はとても効果的
- 価格は需要と供給とでは決まらない
- 「無料」は効果絶大な切り札
- 市場規範より社会規範がだいじ
- 冷静なときに興奮したときのことは考えられない
- 自制心は弱い、外圧は強い
- 所有意識からなるべく距離を置く
- 思い切って選択肢を減らす
- 自分が見たいものしか見えない
- プラセボは巷にあふれている
- 品性はたやすく失われる
- 現金が見えなくなると不正が起こりやすくなる
- 一番先に決断する
本書が気に入った理由は、
- 実験を重視し、定量的なデータを積み上げていること(行動経済学は科学だ!)
- 世の中をよくするための具体的な提案がなされていること
の2点だ。著者の誠実さにとても好感を持った。
ついでに、著者の言葉を借りて、本書のポイントを記しておこう。
この本で紹介した研究からひとつ重要な教訓を引きだすとしたら、わたしたちはみんな、自分がなんの力で動かされているかほとんどわかっていないゲームの駒である、ということだろう。わたしたちはたいてい、自分が舵を握っていて、自分がくだす決断も自分が進む人生の進路も、最終的に自分でコントロールしていると考える。しかし、悲しいかな、こう感じるのは現実というより願望―自分をどんな人間だと思いたいか―によるところが大きい。
もうひとつの重要な教訓は、たとえ不合理があたりまえのことであっても、だからどうしようもないというわけではない、ということだ。いつどこでまちがった決断をするおそれがあるかを理解しておけば、もっと慎重になって、決断を見直すように努力することもできるし、科学技術を使ってこの生まれながらの弱点を克服することもできる。
最後に、翻訳がすばらしく、すごく読みやすかった。これ、とても大事なこと。