生物学はジャジーかなと 『大学生物学の教科書 第1巻 細胞生物学』
2017/09/16
カラー図解 アメリカ版 大学生物学の教科書 第1巻 細胞生物学 / デイビィッド・サダヴァ (石崎泰樹、丸山敬 訳) / ブルーバックス
理科と音楽とを強引に対比させると、物理はクラシック、生物はジャズって感じがするんだよね。たいした根拠があるわけじゃない。物理&クラシックは理路整然とした中に美しさがあるし、生物&ジャズには文字どおり有機的な変化の妙があるよなあ、と思うくらい。
じゃあ次にどっちが好きかとなると、僕は物理&クラシック派に軍配を上げちゃう。よく理解できなくても好き。
とは言え、たまには生物の勉強でもしてみようかと巷で評判の『カラー図解 アメリカ版 大学生物学の教科書 第1巻 細胞生物学/デイビィッド・サダヴァ、(石崎泰樹、丸山敬 訳)/ブルーバックス』を読んでみた。いやもう驚きの連続で頭がクラクラ。そして二つの点が感動的だった。
本書は、アメリカの大学で教科書に採用されているという『LIFE』の翻訳版。全3巻のうちの第1巻で、細胞の基本的な構成からエネルギーの生成までを扱っている。図がきれいで飽きないが、内容は簡単ではない。いやむちゃくちゃ難しい。章末にテストが付いているのも教科書らしい。ちゃんと勉強せえよということだね。
はじめに書いたように、読み進めると知らないことばかりでびっくりする。生物の勉強って高校で生物Iを習ったくらいだかからね。
まず驚くのは生物の底知れぬ複雑さ。私たちの体は当然細胞から成り立っていて生きているのだけれど、細胞一つの大きさは10μmほど。そんな微小な空間にミトコンドリアやらペルオキシソムやらゴルジ装置やら多数のパーツが詰め込まれ、化学反応とエネルギーの受け渡しが繰り返されている。ボーっと寝転んでテレビを見ているときでも、細胞たちはチャッチャカチャッチャカ働いているのだ。普段絶対意識しないことが自分の体の中で起こっているのがなんとも不思議な感覚だ。生物ってスゲーんだよ、あたりまえだけど。さりげなく気ままに振舞っている生物の中に、基本となる構造が埋め込まれているところがジャズっぽいと感じた理由なのかもしれないね。
もう一つは、そんな複雑なメカニズムを科学者たちが解き明かしてきたこと。1665年、フックによって細胞が発見されて350年ほどの間にここまでベールをはがすとは。頭が下がります。
自分はこんなふうにして生きているんだなあ、と思えるだけでも勉強してみる価値あると思う。生物(学)恐るべし。