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宇宙へは行けなくとも小説は書ける『小説家という職業』

      2017/09/16

小説家という職業 / 森博嗣 / 集英社新書
小説家という職業 (集英社新書)

森博嗣氏のミステリを以前はよく読んだなあ。S&MシリーズとVシリーズの途中まで。でもさすがに飽きたので、以降氏のミステリを手にすることはなくなった。だけどそれ以外のものはまだまだ面白い。何が面白いのかと言えば、どうも「しかられ感」のような気がするなあ。これについては後述。今回の『小説家という職業/森博嗣/集英社新書』も発刊を楽しみに待っていただけあって、面白く読めた。

本書は、『自由をつくる自在に生きる』『創るセンス 工作の思考』に続く3部作のラストの1冊で小説論。これまでにいろいろな所で書かれていた内容も見受けられるけれど、氏の小説(家)に対する考え方が一冊にまとめられたので読み応えあり。

小説(家)論についてはこれまで多くが書かれているて、考え方は人それぞれ。だから森氏の言うことがすべて正解、なんて思う必要はない。
ちょうどさっきNHKのトップランナーを観ていたら、ゲストが道尾秀介で、小説に対する姿勢を語っていたのだけれど、結構本書とは違うことを言っていた。直木賞を狙うか狙わないかの差があるとは思うけど。

ただ、本書の中でこれは絶対正解だよな、と思う点はあって、それは「まえがき」に書いてある(他にも納得するところは沢山ありますけどね)。

とにかく、書くこと、これに尽きる。

小説家を目指すみなさん、とにかく書きましょう。「宇宙へ行けない」のならまだしも、「小説を書けない」理由はわからない、ともおっしゃっていますからね。氏は1時間に6000字、1日3時間で18000字を書くそうなので、小説家になろうと思ったらその値を一つの基準にしてもよいかも。

思いついたことを二つ。
一つめは冒頭に書いた「しかられ感」について。森氏の著作は結構上から目線でものを言ってくるので、なんか自分の方に負い目を感じることないですか。諭されているというような。本書でも、出版界に(一般論かな)叱咤を飛ばしている。しかしその「しかられ感」が絶妙に心地よいのだなあ。これは僕の性格による受け取り方のせいかもしれないが、かなり的を得ていて説得力がある。相手が、そう、例えば張本勲だったら、「ウッセエよ」ってなっちゃうんだけどね。

二つ目は、森博嗣と斉藤洋とに似たような感触があるな、ということ。同じ系統の匂いというか。細かい点はもちろん多々違っているのだけれど。どちらも大学の先生で多作というのはさておき、「小説にはテーマは必要ない」といった点や、小説をビジネスとして捉えているところなど。両者もかなり言いたいことをはっきりおっしゃるようで、「人に好かれるために自分の自由を侵さない」ところが、同じ匂いの本質かもしれないなあ。

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