さて、どのように鉄道を敷こうか 『鉄道と日本軍』
2017/09/16
鉄道と日本軍 / 竹内正浩 / ちくま新書
先日、中央新幹線(リニア中央新幹線)のルートが南アルプスルートに決定した。当然の答がようやく出たわけだが、長野県はまだいちゃもんをつけているようで、見苦しい。斯様に鉄道建設とは大プロジェクトで、雑多な思惑が入り乱れる。かつて思惑の上位は軍事であった。
『鉄道と日本軍/竹内正浩/ちくま新書』は、幕末明治に導入された鉄道の発展の経緯を、これも同時代に取り入れられた近代軍との関係から紹介した一冊。近代史に興味ある僕は、タイトルを一目見て手に取った。
19世紀に登場した鉄道(機関車)が戦争をガラッと変えたというのはよく言われていることで、ヨーロッパ、特にドイツ軍が鉄道を活用した兵站でその筆頭という感触がある。では日本においてそこんとこどうなのか?本書は明治維新から日露戦争まで、軍の影響のもと鉄道建設の紆余曲折をこまかく紹介する。
例えば、最初の主要幹線(東京~京都間)を東海道にするか中山道にするかはとても大きな問題だったようだ。列島の中程を通る中山道を幹線としてそこから各地に支線を張り巡らせるのが理にかなっている。ネットワーク的にも、海から攻撃されにくいという戦略的にも。だが残念なことに、日本は真ん中に山々が連なっているので、それが技術的、経済的にとても困難なのだ。で、中山道が有力視されたときもあったようだが最終的には東海道となった。この決定がその後の日本を形造ったといっても過言ではない。
この他にも、
- 横浜・呉・佐世保・舞鶴の4軍港(海軍鎮守府)への線路建設の経緯
- 対清、対露戦に向けて急ピッチで鉄道が整備されていく模様
など、普段意識していなかったかつての鉄道と軍との結びつきが述べられていて、日本鉄道の歴史がよくわかる。当時は民間鉄道会社がかなりがんばっていたということも初めて知った。
日本の中に一から鉄道を敷きつめていくのは、さぞかし楽しい仕事だったにちがいない。
ただし、本書はとにかく読みにくい。集めたエピソードをとりあえず詰め込みましたという構成なので、こなれていない。時間の後戻りがあったり、無駄話が突然入ってきたりする。読み通すには結構苦労した。