インフラとは何か 『ローマ人の物語 27・28 すべての道はローマに通ず上・下』
2017/09/16
ローマ人の物語〈27〉すべての道はローマに通ず / 塩野七生 / 新潮文庫
文庫化とともに読み始めた『ローマ人の物語』、発刊ペースからだいぶ遅れてきたが、ようやく『ローマ人の物語 27・28 すべての道はローマに通ず上・下/塩野七生/新潮文庫』を読了。
このシリーズ、薄くて持ち運びに便利だわ、面白いわで出張帰りの新幹線の中なんかで読むのに最適。
振り返ると、このブログではこれまで『ローマ人の物語』を一冊も紹介していなかった。ハンニバル、カエサル、アウグストゥスあたり(文庫では3~16巻)は滅法面白い「物語」なので、未読の方はぜひどうぞ。古代史がとても身近になります。
さて、本巻『すべての道はローマに通ず』は、これまでと趣向を変えて歴史物語を一旦中断。ローマのインフラ紹介にスポットを当てた著述となっている。ここで登場するインフラとは、「道路」「橋」「水道」「教育」「医療」。僕としてはハードインフラとしての道路、橋、水道に惹かれたな。2000年も前にあれだけの土木技術を確立していたのだから。
本書もこれまでと同様、女史のローマ礼賛が溢れている。「ローマは立派。なのに??ときたら」とおっしゃりたいのうだろうな(??には各自適当と思う言葉を当てはめてください)。まあ、
- 幹線だけで80000kmもある街道を敷き、
- 道路と変わらぬ橋を架け、
- 水源から数十kmにもおよぶ水道をバンバン引き、
- それらを「人間が人間らしい生活を送るために必要な大事業」と捉えていた、
とあっては、一目置かざるを得ない。
そして序盤に登場する東西両大国の国家的大事業の対比はユニークかと。万里の長城とローマ街道と対比である。自国の防衛において、方や異民族との往来を断ち、方や自国内の人々の往来を促進する。
インフラがどう成されるかは、その民族のこれからの進む道まで決めてしまうのである。万里の長城とローマ街道網。この両者のちがいは、地球の東と西のちがい以上に大きかったと、私には思えてならないのである。
かなり強引な主張ではあるが、案外そうかもね、と思わせてしまう女史の筆力はやはり凄い。インフラのありようを改めて考えさせてくれる。