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恋人たちのフュージョン『天冥の標4 機械じかけの子息たち』

      2017/09/16

天冥の標IV 機械じかけの子息たち / 小川一水 / ハヤカワ文庫JA
天冥の標Ⅳ: 機械じかけの子息たち (ハヤカワ文庫JA)

全10巻が予定されている巨編シリーズの第4巻、シリーズも中盤戦に突入した『天冥の標IV 機械じかけの子息たち/小川一水/ハヤカワ文庫』にはたまげた。長編まるごと官能小説である。

時は2313年、前巻の3年後、主小惑星帯にある軌道娼界〈ハニカム〉の蛋白機械〈恋人たち〉をめぐる苦悩と戦いの物語り。と書いちゃうとフツーのSFのようだが、なんのなんの。次々これでもかと趣向を凝らしたプレイが繰り広げられるのだ。なんせ〈恋人たち(ラバーズ)〉は人間がもつグチャグチャした性欲、性癖を満足させるために作られたアンドロイドなのだから。

この巻だけなら「なんじゃこりゃ」だろう。でも、これまでの3巻があればこそ、そしてこれからの6巻への待望をこめれば、出自を含め〈恋人たち〉の様をとことん書き込んだエピソードとしての価値がある。そしてエロシーンをくぐり抜けると、ようやく全編での位置付けをチラッチラッと垣間見せてくれるのだ。ラゴス、お前はひょっとしてあの。うーん、『メニー・メニー・シープ』を捲り直してみたくなるなあ。

とは言え、やはりこれだけのページを費やしてエロを書かねばならなかったのかと考えると……、まあ今の時点ではそれもありだとしておこう。物語の全貌が明らかになったとき、その必要性がわかることを期待して。

もうじき(11月24日)第5巻『羊と猿と百掬の銀河』が出る。ウズウズしてくるぞ!

 - 小説, 読書