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アルコールとカフェインが主役の歴史本『世界を変えた6つの飲み物』

      2017/09/16

世界を変えた6つの飲み物 - ビール、ワイン、蒸留酒、コーヒー、紅茶、コーラが語るもうひとつの歴史人間は飲み物が大好きなのだ。だから飲み物は金になる。金がからむと人間は欲望に駆り立てられ動き出す。そして歴史が作られる。

『世界を変えた6つの飲み物 ― ビール、ワイン、蒸留酒、コーヒー、紅茶、コーラが語るもうひとつの歴史/トム・スタンデージ(新井崇嗣 訳)/インターシフト』を読んで吸収したのはそんな史観だった。世界史を学ぶ副読本として、これはかなりイケるんじゃないかな。

本書はその名のとおり、世界的にメジャーな6つの飲み物、ビール、ワイン、蒸留酒、コーヒー、紅茶、コーラを真ん中に据えて歴史、西洋史を語った一冊。古代のメソポタミア、エジプト文明から現在のアメリカ文明までと広い時代範囲を網羅している。勘違いしてはいけないのが(僕は最初勘違いしていたのだけれど)、本書は飲み物の歴史でもなければ瑣末な蘊蓄でもない。著者が訴えたかったのは、飲み物が歴史の大きなうねりを作りだしていたということだ。

例えば蒸留酒の一つ、ラム酒。サトウキビから砂糖を採った残りかすを発酵・蒸留して作られる安物の酒だったのだが、海軍など船乗りたちが愛飲するようになる。ラム酒は儲かる飲み物になったのだ。ラム酒を作るには原料のサトウキビが要るわけだが、このサトウキビを収穫するには奴隷を使ったプランテーションが必要だった。奴隷を使ってラム酒を作り、ラム酒で儲けた金で奴隷を買う。奴隷が増えればプランテーションは広大になり、ラム酒は増産される。こんな「奴隷制度―プランテーション―ラム酒」トライアングルが成立していたのだ。

例えばコーヒーと茶。ヨーロッパ人にとってそれは洗練された、ちょっと気取った嗜好品だった。コーヒーハウスやティーガーデンが人気を博し、コーヒー、紅茶は儲かる飲み物になった。ここで問題が生じてくる。当時、コーヒーはアラビアが、茶は清がその供給を独占していて、気に食わない。豆や葉は売るけど、その作り方を他国に明かすことはなかった。そこでヨーロッパ人はどうしたか。コーヒーの枝を盗み出し、地球上に散らばっている植民地にコーヒーを栽培させた。インドに茶木のあることを発見し、インドで熱心に栽培させた。さらに非道なことに、清からはアヘンで茶葉を買った。後のアヘン戦争へとつながる。

このように、人間は飲み物が大好きなのだ。だから飲み物は金になる。金がからむと人間は欲望に駆り立てられ動き出す。そして歴史が作られる。今何気なく口にしている飲み物の過去をたどれば、人間臭い歴史が垣間見えてきた。

 

 - 社会, 読書