資本論を聞きかじれ『マルクスる? 世界一簡単なマルクス経済学の本』
2017/09/16
マルクスる?世界一簡単なマルクス経済学の本 / 木暮太一 / マトマ出版
超訳『資本論』 / 的場昭弘 / 祥伝社新書
最近、あることにふと気づいて愕然としたのである。資本主義についてほとんど何も知らないのだ。これはダメでしょう。資本主義社会に生きているわけで、住んでいる社会がどんな理屈で動いているのか知らないってのはどう考えたってダメでしょ。駒の動かし方も矢倉も知らずに将棋打つようなものでしょう。こんな当然のことにこの歳になるまで気づかなかったとは大バカ者です。
理屈を知らなくても自動車を運転したりスマホを操作したりすることはできる。そのように作られているからね。同じように、資本主義の理屈や仕組みがわからなくても生きてはいける。でも正体がわからないって不安、怖い。だから資本主義とは何かについて少しは知っておきたいと思うのね。車や携帯などの機械や装置の使い方を知るために取扱説明書がついてる。資本主義の取扱説明書のようなものはないか?あるよ、『資本論』です。その名もズバリ、です。
資本主義とは何か、それを知る最高のテキストは、読んだこともない『資本論』じゃないのかなと想像する。うん、『資本論』を読もう!と行きたいところだがこれはきつい。超絶読みにくいらしいので、片手間にササッと読めるものではないのだ。そんなときはエッセンスを聞きかじる、すなわちわかりやすい入門用の解説本が手っ取り早い。
そこで手に取ってみたのが『マルクスる? 世界一簡単なマルクス経済学の本』と『超訳『資本論』』。「世界一簡単」と「超訳」に惹かれました。で、2冊同時に読ん結論を言うと、『マルクスる?…』だけで充分だった。『マルクスる?…』が圧倒的に、レベル3段階くらい読みやすくわかりやすい。さすが木暮太一です。以下は『マルクスる?…』について。
本書には(元はといえば『資本論』には)こんなことが書かれています。へーっ、資本主義ってそういうことだったんだ。
- 会社の儲け「剰余価値」は労働者に自分の給料以上の価値を生み出させたときのみ得られる。(これが基本で最重要ポイント)
- 労働者が働かないと剰余価値は生まれないのに、機械化によって労働者はどんどん減らされていく。
- 一方で、ライバルに差別化して得られる利益「特別剰余価値」は長くは続かず、やがて消えてしまう。(そうだよな)
- 先行利益は長く続かないし、労働者は減るとあっては、企業の利益率は下がっていかざるを得ない。(利益率は時間とともに必ず下がるもの!)
- 利益率は下がるけれど、生産される商品の量は機械化によってどんどん増える。一方、労働者の賃金は減る。需要と供給とのバランスは崩れ、商品が売れなくなる時が来る。
- そして恐慌がやってくる。
- 企業が淘汰され、新しい経済が再スタートする。
資本家が利益を追い求めれば必ず恐慌になる、これが法則なのだ。リンゴが落ちるのと同じ。そして、これって現代の状況をすばらしく説明しているようで、正しいように思える。ちゃらんぽらんでアテにならない経済学の中にあって、これほどの精度で資本主義社会を予測するとは、マルクスやはりすごい。
その他にも、
- 給料は「労働者が明日も働くための必要な経費」で決まっている。個人の成果や景気の良し悪しが給料の額に結びつくわけではない。
- 会社は仕入れた原材料を使って生産利益を生み出そうとする。経営者にとって労働者は原材料。
なんてことを知ることができて、いやーためになる1冊でした。
今この資本主義社会で暮らす以上、労働者が搾取されるのは当然、不況や恐慌が襲ってくるのは必然なのだ。おそらく数百年後には新しい経済の形に変化しているのだろうね。