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質量が二階のテンソルだということを知らなかった [物理と数学の不思議な関係]

      2017/09/16

物理と数学の不思議な関係―遠くて近い二つの「科学」『物理と数学の不思議な関係-遠くて近い二つの「科学」/マルコム・E・ラインズ/ハヤカワ文庫』をザーッと読む。“ザーッと”というのは、中に出てくる数式をフォローすることもせず、大まかに雰囲気をつかめるくらいに、ということ。それでも断然楽しめた。

小生、物理も数学も得意ではない(かと言って嫌いではない)。例えば、本書の中に出てくるのだが、質量が二階のテンソルだということを小生は知らなかった。このレベルだ。けれどこの手のお話は大好きだ。「数学」はエレガントな世界を構築する学問、「物理」は世界をエレガントに説明する学問、てなイメージを小生は持っている。本書のような読み物は、そのようなエレガントな世界に少しだけ触れられることにあるのだと思う。もちろん数学、物理の得意な方はそのような世界にどっぷり浸ることができるのだろう。

本書は、タイトルがそのまま示しているように、数学と物理学との関わり合いを、いくつかのテーマについて解説したのも。学問分野で言えば数理物理に関する読み物となろう。「群論」「結晶構造」「非ユークリッド幾何学」「相対性理論」「統計力学」「超ひも理論」「カオス」などについて語られている。

ちなみに翻訳は青木薫。女史は10数冊の翻訳を手がけられていて、絶大なる信頼を得ていらっしゃる。小生がこれまでに読んだのは『フェルマーの最終定理』『暗号解読』だけだが、いつもながら読みやすい。脱帽。

最後に、時々に目にするジョークを引用。

三人の学者が、会議に出席するためロンドンからエディンバラに向かったと思ってほしい。イングランドとスコットランドとの境界線を越えるとき、三人は何の気なしに列車の窓から外を眺め、原っぱにいる二頭の黒い羊に目をとめた。第一の学者は天文学者だったが、すぐさまにこの光景に興味を示した。「あれを見たまえ。スコットランドの羊は黒いのだ」。二番目の学者は物理学者で、天文学者が安易な一般化をしたのが気に入らなかった。「何を馬鹿なことを言っているんだ。この事実が示しているのは、スコットランドの羊のうち、少なくとも二頭は黒いということにすぎないじゃないか!」。しばし沈黙が流れ、物理学者は「どんなもんだい」と優越感にひたった。しかしこの物理学者も、第三の学者である数学者にしてやられることになったのである。数学者いわく、「根拠がないという点では、あなたの意見も同じことですよ。この観測結果に対する正しい解釈はこうです。スコットランドの羊のうち少なくとも二頭は、少なくとも片面が黒い!」。

以前見たものは、「天文学者」が「経営者」だったような気がする。

 - 自然科学・応用科学, 読書