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負けるとわかっていても 『不完全性定理』

      2017/09/16

不完全性定理―数学的体系のあゆみ負けるとわかっている戦いに臨む、『不完全性定理―数学的体系のあゆみ/野崎昭弘/ちくま学芸文庫』を手にしたときの心境がまさにそれである。
本書はタイトルが示すとおり、ゲーデルの「不完全性定理」の解説書。「不完全性定理」は、1931年にチェコスロバキア出身の数学者ゲーデルが発表したメタ数学における画期的な定理で、

自然数論を含む述語理論の体系Zは、もし無矛盾ならば、形式的に不完全である

というもの。ここで「無矛盾」とは、

どんな文Mについても、Mとその否定-Mとが、両方とも証明されることは決してない

ということで、「形式的に完全」とは、

任意の閉じた理論式Pについて、Pそれ自身か、その否定-Pかのどちらかが、必ず証明できる

ということ。
これだけだと何を言っているのかよくわからないが、「矛盾のない世界では証明できない問題が必ず存在する」ということだと思う。乱暴に解釈すると、「世の中矛盾だらけだから、何でも証明できちゃう」てことか、と勝手に納得した。と言うのは冗談で、本来はとてつもなく貴重な仕事らしいのである。
早い話、はじめの予想どおり負けてしまったわけで、そうそう素人がこの定理を理解できるはずもなく、やむを得まい。読後の収穫を敢えて挙げれば、「不完全性定理」なるものが存在することを知ったこと、その定理に至るまでの数学史に関して少しは知識を得たことであろうか。たまには脳を酷使するのもよい。

 - 自然科学・応用科学, 読書