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さあ、これで判事に会う用意ができた 『少年の荒野』

      2017/09/16

ふと「もう一度読んでみようかな」との思いが湧いて、『少年の荒野/ジェレマイア・ヒーリイ/ハヤカワ・ポケット・ミステリ』を手に取った。奥付には「昭和61年10月15日発行」とあるから、じつに22年ぶりの再読となる。そういえば当時は、ハードボイルドと呼ばれるものを読み漁っていた。フィリップ・マーロウ、リュウ・アーチャーは基本として、スペンサー、アルバート・サムスン、マット・スカダー、ミロ・ミロドラゴヴィッチ、そしてこのジョン・カディ等々。意外と気に入っていたのはアルバート・サムスンだった。懐かしい。

久々に読む『少年の荒野』、ストーリーはもうすっかり忘れていたので新鮮だった。名家の一人息子が失踪し、その捜索を少年尾の祖母から依頼された私立探偵ジョン・カディ。失踪の背景には、少年の母親の事故死が絡んでいるらしく、なぜか父親はカディの捜査を露骨に妨害する。少年の足取りを追い、残り15ページでにたどり着く結末に意表を突かれること請け合い。ロス・マク系統に位置づけられる、正統派の探偵小説だ。

ネタバレっぽくなるが、強い者(力のある男)=悪、弱い者(女や幼い子供)=善、という、現代的通念をどう裏切るかが、この手の物語としての鍵となる。冒頭に、「ふと「もう一度読んでみようかな」との思いが湧いて」と書いたが、探偵小説のプロットを詳細に勉強してみようと思い立ったのがことの始まり。読者をミスリードさせつつ、最後にアッと言わせる本作は充分その参考になった。

 - 小説, 読書