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知っておくべき10のニュース 『クーリエ・ジャポン2月号 2010 Vol.064』

      2017/09/16

クーリエ・ジャポン2月号 2010 Vol.064レビュープラスさんから献本いただきました。いつもありがとうございます。

国際ニュース編集誌『クーリエ・ジャポン』、2月号のメイン特集は「次のITライフ」。これについては後で触れるとして、ここでは2番目の特集「注目されなかったが、じつは…2010年を決める「10大ニュース」」に注目したい。というのも、この記事を10大ニュースとしてセレクトしたのがいかにもクーリエ・ジャポンらしいと感じたからだ(私の勝手なCJ像ですけど)。
取り上げられたニュースは次の10本。ヘッドラインはこのようになっている。

  1. 地球温暖化で「北極海航路」が開通
  2. イラクで新たな民族間紛争の兆し
  3. インド・中国間にホットラインが開設
  4. 不動産価格上昇で住宅バブル再燃か?
  5. 失速する米国の「文民増派」戦略
  6. 中国海軍がブラジルとの関係を強化
  7. 最新技術でも撲滅できない不正パスポート
  8. 活動家暗殺に「チェチェン大統領関与」の声
  9. 米国がウガンダ政府軍の支援を開始
  10. 米国で進行中の "新世代スパイ育成計画"

参考として、平均値と思われる共同通信社の10大ニュースと比べてみよう。

  1. オバマ米新政権スタート。「核なき世界」でノーベル平和賞
  2. 米自動車大手GM、クライスラーが経営破綻(はたん)
  3. 北朝鮮が6カ国協議を離脱、核実験。米朝関係に動きも
  4. アフガンの治安、さらに悪化。米が軍隊の増派含む新戦略
  5. イラク多国籍軍に幕。米軍戦闘部隊が都市部から撤退
  6. 歌手のマイケル・ジャクソンさん急死。映画は大ヒット
  7. 中国が建国60周年。ウイグルで暴動。経済は8%成長
  8. 金融サミット相次ぎ開催。「ドバイ・ショック」で為替など激動
  9. 2016年夏季五輪のリオ開催決まる。東京は落選
  10. EU新基本条約が発効。新「大統領」にベルギー首相

ほとんど重なっていないことがおわかりいただけただろうか(かろうじて4位が上の5位と近いニュースか)。本誌の10大ニュースは、もちろん奇をてらったものではなく、ちゃんと訳がある。元の記事は、Foreign Policy誌の記事“The 10 Stories You should Have Known Last Year”。このタイトルに大きな意味があるのだ。

少し細かく読んでみよう。

【地球温暖化で「北極海航路」が開通】
昨年9月、ドイツの貨物船2隻が北極海航路を通って東アジアから西ヨーロッパへと横断したニュース。このニュースの捉え方は3つ。

  • 海運業者にとって低コスト、時間短縮が実現する金鉱脈発掘。
  • 環境保護論者にとっては気候変動が危険な転換点に達した兆候。
  • 新たな地政学的な争いを引き起こす可能性(温厚なカナダでさえ軍事演習を開始している)。

一つの出来事が多数の方面に影響をおよぼす典型例だ。「北極の氷が解ける→白クマがかわいそう」といった連想だけでなく、地政学的な変化をも見逃してはならないということ。

【イラクで新たな民族間紛争の兆し】
日本ではイラクの様子を伝えるニュースは最近ほとんどないのではなかろうか。クーリエ・ジャポンはそんなことはない。途切れることなくしっかりとイラクを追いかけている。フセイン政権が存続していたら、などと仮定の話は意味がない。ただ、アメリカがしでかしたことがどんな結果を引き起こしたのかは今後の中東を見る上でフォローし続けていきたい。p58には、「汚職と腐敗に塗れたイラク 国会議員の月給は4万ドル」なんていう記事もあり、イラクの混乱が複合的に伝わってくる。

【インド・中国間にホットラインが開設】
ホットラインと聞いてどのような印象を持たれるだろうか。ひょっとして仲良しの関係などと思ったら大間違いなのである。ホットラインは対立国の証。タワン地区を巡って国境紛争が続いており、それを致命的な軍事衝突に発展させないための連絡手段なのだ。ちなみに中印に関しては連載コラムでも毎月充実した情報を発信していて、今月の「地元誌が伝える「インドの現在」では、インドと中国との別の摩擦(労働問題)が取り上げられている。世界を揺さぶる中印2国の動向は注目しすぎることはない。

以上のように、本特集は、環境・中印関係・金融危機・軍事バランス・テロなど、これからの世界情勢を読み解く上での重大なニュースなのだ。今は大きな事件じゃないかもしれないが、未来の大事件につながっていきそうな出来事。これが“you should have known”たる所以だ。これに対し、一般に出回る10大ニュースは“you have known well”となるだろうか。未来を見るか、過去を振り返るか、そのスタンスの違いと言える。

ところで、こうして記事を書いていて気がついたことがある。クーリエ・ジャポンを読み続けていると、徐々にではあるが記事どうしが頭の中でネットワーク化されつつあるような。私の頭では頼りないので、記事のデータベース化をしてみようかしらと企てている。

最後に、メインのIT特集について簡単に。テレビ、キンドルなどのメディアやアップル、グーグルなどの主要IT企業の今後を探ろうという試み。これらについては無数の情報が飛び交っている今日、厳選されたコア記事で、ここぞというポイントを押さえておけるのが、一般人の私としてはありがたい。優れた編集眼のおかげだと思う。

 - 社会, 読書