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技術がタダを必然にした 『フリー』

      2017/09/16

フリー~〈無料〉からお金を生みだす新戦略 / クリス・アンダーソン(小林弘人 監修、高橋則明 訳) / 日本放送出版協会
フリー~〈無料〉からお金を生みだす新戦略

ビジネス書にはあまり食指が動かない性質なので、かなり出遅れてしまったが、これは極めて重要な書物なのではないかと思うに至り、ようやく『フリー~〈無料〉からお金を生みだす新戦略/クリス・アンダーソン(小林弘人 監修、高橋則明 訳)/日本放送出版協会』を読んでみた。思いは当たっていて、私のような古い人間にとっては頭をゴツゴツ叩かれるような、刺激的な一冊だった。

本書のポイントは、「ビット経済においてフリーは必然」という点に尽きる。この一事を様々な角度から、手を変え品を変え頭に叩き込んでくれるのだ。

はじめに、アトム経済とビット経済を理解しておく必要がある。アトム経済とはモノを扱う経済のこと。自動車、バッグ、歯ブラシ、缶詰、……、身の回りにあるモノなんでも。一方、ビット経済は情報通信の経済、インターネットを通じて飛び込んでくるものなどがそうだ。

ビット経済におけるフリーの必然性は、情報処理能力、デジタル記憶容量、通信帯域幅の増大から帰着される結論なので、まず真理と思って間違いない。情報処理能力に関するムーアの法則は2年で2倍だが、デジタル記憶容量、通信帯域幅はそれよりもっと速い速度で向上している。ビット経済にまつわるコストが仮に年々半減するとすれば、3.3年で1/10、6.6年で1/100。製造コスト、流通コストはどんどん下がり、「安すぎてきにならない」状況となる。だから当然無料、フリー。

このことが、アトム世代には理解が難しい。アトム経済では「タダより高いものはない」と教えられてきたのだから。事実、アトム経済のタダはとても胡散臭い。しかし、ムーアの法則が提唱された時点で、今の状況は予測できたのである。もちろん多数は予測できず、法則を実証するためのような仕事を続けた。予測し得た、すなわち法則を利用した少数が現在の勝ち組となっている。

繰り返しになるが、「ビット経済においてフリーは必然」という事実を身体に染み込ませるために、タダはまやかしだと思っている古い世代はもちろん、当たり前のようにフリーが身に染みついている若い世代も押さえておきたい歴史的な一冊だと思う。

 - 社会, 読書