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ヒョウはなぜヒョウ柄なのか 『かたち 自然が創り出す美しいパターン』

      2022/04/16

ハチの巣の六角形、シマウマやヒョウや魚の模様、花びらや葉のひだなど、自然が持つ様々なパターンはどうして生じるのだろうか。ダーウィニズムでは、「突然変異」と「自然淘汰」を金科玉条に、「生存に一番適していたからそうなったんだ」と説明する。それって本当?

『かたち 自然が創り出す美しいパターン/フィリップ・ボール(林大 訳)/早川書房』は、物理、化学、そして数学的にそれらのパターンができる機構を解き明かしていく。ダーウィニズム的解釈より数理的説明の方がよっぽど信憑性あるでしょ、てとこ。読んでてワクワク、たまらなく面白かった。

例えばハチの巣。六角形(六角柱)が並ぶ。空間を埋め尽くすのに六角形がもっとも壁の面積を節約できるからと言われているわけだが、ハチがそんなこと知ってるとも思えない。様々なパターンを試した結果、六角形が生き残った(自然淘汰)なんて考えにくいし。本書では、純粋に表面エネルギーが最小になることと結論している。「ハチは節約などしない」だ。そして、表面積を最も小さくして空間を埋め尽くすウィア&フィーランのセル構造にまで話がおよぶ。

例えばシマウマやヒョウの模様。なんであんな模様ができるのか。突然変異で生じた模様がたまたま迷彩になっていて自然淘汰を勝ち抜いたのか。いえいえ。チューリングパターンで説明できる。チューリングパターンとは、拡散速度が大きく異なり反応を促進もしくは抑制する2つの物質の反応によって生じるパターンで、「反応=拡散系」「活性因子=抑制因子」と呼ばれている。この考え方を上手く用いると、ほとんどの動物の体にあるパターンを再現できちゃう。たまたまヒョウ柄ができたのではなく、そうなるべくしてなったのだ。

ついでながら、このような体の模様は、適度な大きさの動物に特有なのだそうだ。そう言われてみればそんな気がする。ネズミにはないし、ゾウやカバにもない。ネコからウマくらいのサイズがちょうど良いらしい。これもチューリングモデルで説明できるそうだ。

本書では、ウィリアム・ベイリーの『自然神学』、ダーシー・ウェントワース・トムソンの『成長と形』といった歴史をたどりつつ、最新の科学でもってそんないくつものパターンを解明していく。その根底にあるのは「対称性の自発的な破れ」であり、それを現実化する「自己触媒作用」である。複雑系は面白いなあとますます興味が湧いてきた。

『かたち』は、自然に潜むパターンを解読する三部作のまず第一弾。この後も楽しみだ。

 - 自然科学・応用科学, 読書