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現代中国幹部たちの裏側を覗く 『十三億分の一の男』

      2017/09/16

ちょっと前のニューズウィーク日本版(2015.6.23)に、「世界を驚かせた「大トラ」の白髪姿」と題した記事があった。
汚職容疑で起訴された元政治局常務委員の周永康が裁判所に現れたとき、頭髪が真っ白に変わっていた。中国の指導者らはたいてい黒髪ふさふさだから、あえて白髪姿を国民の前にさらすのは見せしめ以外の何物でもない、というものだ。フムフム、敗者はとことん貶められるのだな。
こんな最近の中国の様子をサクッと知るのに『十三億分の一の男』はうってつけだった。本書は江沢民、胡錦濤、習近平と続く、中国共産党の権力闘争、闇を晒したルポルタージュ。著者は、胡錦濤に「あなたの記事をよく見ています」と言わせた、朝日新聞の記者。朝日ということで、当初手を出し渋ったけれど、本書は当たり。
引退後も実権を手放さない江沢民、江のいじめにぶるぶると体を震わせながら唇を噛むしかない胡錦濤。そんな過去のしがらみ勢力の一掃を企む習近平。上の周永康についても詳しい。江が院政を敷くために登用した操り人形、そして習が見せしめのために摘発した大トラ中の大トラ。汚職捜査の末、没収された財産が1200億元(2兆2千億円)だとか。中国の悪事はケタが違う。賄賂をごっそり懐に入れ、子女、妾をアメリカに住まわせる。
さて、現皇帝の習近平、若い頃からその座を虎視眈々と狙いながら、これも戦術か愚鈍を装っていた節がある。汗に濡れた穴あきシャツで人前に登場したりして。
地方を転々としながら力を蓄え、指導部レースの最後尾から一気に先頭に躍り出た。出世の肝は、地方時代に軍関係者に深く入り込んでいたこと。策士である。
命も奪われかねない中国政界の死闘。そんな奴らの頂点、「十三億分の一の男」に登りつめ、牛耳っている漢こそ習近平なのである。日本の政治家が束になっても敵いそうにない。間違っても彼を、中国を侮ってはいけない。

十三億分の一の男 中国皇帝を巡る人類最大の権力闘争 / 峯村健司 / 小学館
十三億分の一の男 中国皇帝を巡る人類最大の権力闘争

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