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生命起源に迫っている予感 『生命はなぜ生まれたのか』

      2017/09/16

ワヤワヤと胸が躍りだす。まさか生命誕生の謎の解き明かされる日がほんとうに来るんじゃないのか、そんな期待をしてしまう。これが踊らずにいられようか。

『生命はなぜ生まれたのか 地球生物の起源の謎に迫る』は、現時点での生命起源の到達点を、これでもかと楽しくわかりやすく講じてくれる読み物。化学進化、生物学、エネルギー代謝の解説に続き、クライマックスは「第6章 最古の持続的生命に関する新仮説」だ。著者の唱える仮説UltraH3 Linkage(ウルトラエイチキュービックリンケージ)がドカッと披露される。それも饒舌に。ウルトラH3を簡単に紹介すると、「超ラチェット岩と熱水活動とが合わさってできる高濃度水素領域(ハイパースライム)こそ太古の生命誕生環境と酷似しているに違いない!」なる仮説。これだけではなんのこっちゃであるが、生命が登場した瞬間が見えた気がした。

ユーリー・ミラーの実験から60年、生命誕生のシナリオはどんどん塗り替えられ、このようになった。地球科学、宇宙論の進歩も巻き込んだ、これぞ科学の力。

ちなみに、私たち地球生物を構成している物質は、この太陽系ができるための素となる超新星爆発がまき散らしたものだ。ならば、45億年前よりさらにはるか昔、このあたりに別の恒星があって、惑星があって、そこには生命が存在したかもしれず、私達はその生命の原子を引き継いでいるかもしれないのだそうだ。しびれて頭がクラクラする。

著者の高井センセは、深海に挑む微生物学者。お茶目で情熱的なんだろうなと察する。松岡修造みたいな感じと思っていただければよい。ウルトラH3を解説したときの締めはこうだ。

これほど水も漏らさぬ美しいロジックがあるだろうか?いやない。そう私は感じた。「この地球を支配した」と勘違いしたとして、誰が文句を言えるだろうか?いや言えない。

この自己陶酔、大好き。

高井センセにはこれからも生命の起源を厚く包んだベールを剥がしていってもらいたい。門外漢として、こんなにワクワクすることはない。

生命はなぜ生まれたのか―地球生物の起源の謎に迫る / 高井研 / 幻冬舎新書
生命はなぜ生まれたのか―地球生物の起源の謎に迫る (幻冬舎新書)

 - 自然科学・応用科学, 読書