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『鳥類学者 無謀にも恐竜を語る』と面白すぎるじゃないですか

      2017/09/16

鳥類学者 無謀にも恐竜を語る (生物ミステリー) / 川上和人 / 技術評論社
鳥類学者 無謀にも恐竜を語る (生物ミステリー)
これぞ科学エンタテイメント!だね。超面白恐竜本。それもうれしいことに国産。こんなにニタニタしながら夢中で読ませてくれる科学モノを書いてしまうとは、川上和人氏は稀有のエンタテナーなのである。

鳥は恐竜から進化した。今では定説だけど、鳥の祖先は始祖鳥と教えられた記憶のあるおじさんにとって、これはけっこうな衝撃なのである。要するに鳥は今生きている恐竜。てことは逆に、鳥から遡れば恐竜に辿りつけるんじゃないの、となる。かつての恐竜を知る手掛かりは化石(ほとんど骨)しかないけれど、鳥なら生きたまま調査できるのだから、その情報量たるや比較にならない。

というところで、森林総合研究所で日夜鳥類を研究している著者が颯爽と登場してきた。「無謀にも」とは建前で、恐竜に関してかなりの準備を整えた上で、おれが恐竜学者に代わって考えてやろうじゃないかとばかりに八面六臂の大活躍。今や鳥類学者は生体恐竜学者なのだから当然といえば当然、本書の価値はそこにこそある。

さて、鳥類学者は無謀にも何を語ったか。無謀にも勝手にまとめてしまえば、話題は大きく分けて二つ。鳥の進化と恐竜の実態だ。

保温のための羽毛が飛行の役に立っちゃった

個人的に、鳥はなぜ飛ぶように進化したのか?という疑問を持っていた。突然立派な羽がはえはずはなし、中途半端な羽は邪魔でしかないと思えるから。この点について著者はちゃんと考察してくれていて、保温のために進化した羽毛が、気がついてみれば飛ぶのに使えるじゃん、となったんじゃないかと。大空がニッチだったことも、その駆動力になったかもしれない。

化石ではわからない恐竜の様子

化石からはわからないことにも、大胆かつ論理的に仮説を打ち出していく。色、鳴き声、毒を持っていたか、夜行性か昼行性か、巣作り、などなど。鳥がこうなんだから恐竜もこうに違いない、とどんどん推察を進め、想像が膨らんでいく。現在、白黒の鳥が多種いるのだから白黒の恐竜もいたはずだ、とかね。いやもう恐竜の様がググっと浮かび上がってきて愉快なのである。

お笑い番組よりはるかに笑える

付け加えておかないといけないことは、そんな鳥や恐竜のあれこれを語る文章がおそろしく軽妙洒脱なこと。全ページに笑えるネタが散りばめられているので、面白いったらありゃしない。脚注もしゃぶりつくすべし、ですな。

ちなみに、本書は「生物ミステリー」と題したシリーズの第1弾。生物に関するミステリとなると思いつくのは、40億年前の生命・生物の誕生、5億4000万年前のカンブリア紀の爆発、身近なところでは人類の誕生と進化、など。なかでも「恐竜」は人気もサイズもビッグだから、トップバッターに置かれたのもうなづける。そして本書は先頭打者ホームランを放ったようなもの。今後の展開が楽しみ。次は何だ?

 - 自然科学・応用科学, 読書