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おまえのせいだ、このメス犬! 『四つの雨』

      2017/09/16

四つの雨 / ロバート・ウォード(田村義進 訳) / ハヤカワ・ミステリ文庫
四つの雨 (ハヤカワ・ミステリ文庫 ウ 21-1)

久しぶりに翻訳ミステリを読んでみるかと手に取ったのは『四つの雨』本書に関する予備知識を持っていたわけではなく、書店をぶらついていてこんな帯の文句が目に留まったのだ。

マイクル・コナリー、感激。
ジェイムズ・クラムリー、脱帽。
T・ジェファーソン・パーカー、驚愕。
ケン・ブルーウン、共感。
ローラ・リップマン、驚嘆。
ロバート・クレイス、賞賛。
ジョージ・P・ペレケーノス、羨望。
これぞ大人のノワールだ!
最強中年作家陣が大絶賛!!!

おじさんとしては読みたくなるわな。
帯を紹介したついでに、あらすじも裏表紙の紹介文を拝借する。

夢やぶれた心理療法士ボブ・ウェルズは、50歳を越えた今、妻に逃げられ、酒に溺れ、独り極貧にあえいでいた。しかし、ジェシーとの出会いがすべてを変えた。美しく、愛らしく、自分と同じく苦労を重ねてきた女性。彼女と一緒に幸せになりたい。その一心で、ボブは患者の美術商が持つ貴重な古美術を盗み、転売しようともくろむが……絶望から絶頂へ、そして絶頂から絶望へ。五十男の悲哀がにじみでる感涙のノワール小説。

転がりだしたら止まらない、という面白さは充分にある。地面から昇っていって一気に下る、文字どおりのジェットコースター小説。終盤に至ってはページを捲るのももどかしく、ザザーッと流してエンディングに到達した。

しかしである、どうもしっくりこない、「なんだかなあ」という印象が残る一冊なのだ。その理由は主人公のキャラにあって、このボブという男、あまりにも幼稚なのだ。50を過ぎた人間がこんなにも幼稚に描かれてよいのか。思考レベルが低すぎるんじゃないのか。周囲の貧しい人々を見て自分もああなるのかと落ち込み、好みの女が現われたらはしゃぎ、呑気な金持ち生活を想像し、後先考えずに犯罪を犯し、有名になって有頂天になり、にもかかわらず金に汚い。そして終盤に至っては、彼女が妊娠したことを告げられるや「ボク、子供いらないもん。じゃまだもん。逃げちゃおうっと」なのである。
中年男の実像はこんなものなのか。それともギャグを書いたのか。小生にとっては「五十男の悲哀がにじみでる感涙のノワール小説」ではなかった。「五十男の無様さがあふれでる憫笑のノワール小説」であった。

 - 小説, 読書