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見るだけてぐっとくる 『ドボク・サミット』

      2017/09/16

ドボク・サミット / ドボク・サミット実行委員会編、萩原雅紀、大山顕、石井哲、長谷川秀記、佐藤淳一、石川初、御代田和弘 / 蔵野美術大学出版局
ドボク・サミット

本が好き!さんから献本いただきました。いつもありがとうございます。

対象はなんであれ、まじまじとモノを見つめれば「スッゲー」という感動が湧いてくる。航空機、車、山、昆虫、細胞、電子回路、…、人工物であれ自然であれ、たいていのモノは凄い。そこに「好き」という感情が加わるとのめり込んで行くことになる。のめり込むことは楽しい。のめり込んでいる人を見るのも、理屈抜きでなぜか楽しい。
そんな中で、「ドボク」に夢中になることはどんな特異性があるのか。『ドボク・サミット/ドボク・サミット実行委員会編、萩原雅紀、大山顕、石井哲、長谷川秀記、佐藤淳一、石川初、御代田和弘/蔵野美術大学出版局』はそこんところまで踏み込んでいて、一読すればドボクを見る目が変わること間違いなしだ。

本書は、テレビや著作、webなどで活躍中のドボク鑑賞家が集結して開催された「ドボク・サミット」の模様が編集された貴重な作品。ダム、団地、工場、ジャンクション、鉄塔、水門、各分野の鑑賞第一人者が一堂に会しているのでサミットと呼ぶに相応しい。

前半では、「PRESENTATION」と題して各分野のスッゲーところが披露、解説される。写真が豊富で、それらを眺めているだけで興奮してくる。僕はそれらの中でもジャンクションの美しさにうたれた。ページをめくりながら「スッゲー」を連発しちゃった。

これだけで終わることも可能だが、それだと見せびらかし大会に終わっちゃう。続く「SYMPOSIUM」「STUDY」がサミットの真骨頂だ。
ここまで「ドボク」という表記がいくつかあったが、これといわゆる「土木」とはちょっと違う。そこでまずは「ドボク」の定義から。

ドボクとは、土木構造物のみならず土木の特徴の一つである機能性重視という性格を持つ建築物(工場や団地など)まで含めた領域を示すために、無理やり定義された表現方法である。

なるほど。

これを踏まえて、ドボクはその他の鑑賞対象と何が違うのか?それには2点あるようだ。

  1. ドボクの造形はそれを見る周囲の視線を意識していない。最近では環境にとけ込むことも考慮されているのだろうがそれは二の次。造形の絶対的な基準は機能だ。
  2. 土木は最低100年という世界。100年も変わらないとなると、もう第2の自然だ。ころころ変わる社会の価値観にこびへつらっていては成り立たない。

この二つを併せると、ドボクが、小賢しく仕組まれた景観ではない「リアリティ」、「何かの役に立っている」実体感を放っているという特徴を有していることが浮かび上がってくる。そしてリアリティを見出そうとすることこそドボク鑑賞なのだ。ドボクが崇高に見えてくるのだ。

もう一つ、最近のドボク鑑賞ブームにパネラーたちが浮かれていないところも良いなあと思う。ブームをただのエンタテイメントに終わらせることのないように、さらに進んで土木を変える力としての役割を果たそうという理想を持って活動しているところに期待したい。

僕はもともとドボクに魅力を感じる方だったけれど、この本を読んでますます土木に目が行くようになった。まずは「スッゲー」から味わっていただきたい。

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