暴れ馬の脇を避けて通ったのは誰か?
2016/07/06
朝からもやもやしている。きっかけは日経新聞の「春秋」だ。
今朝の「春秋」はリーダー論についての他愛無いもので、それ自体はつまらないのだが、中にこのような一文があった。
東郷は日露戦争の日本海海戦で、連合艦隊司令長官として勝利をもたらした英雄である。しかし散歩中、つながれている馬にも注意を怠らず、突然、暴れ出しても蹴(け)られないように回り道をする人だったそうだ。作家の子母沢寛の随筆に出ている逸話である。大物はつまらぬことで無理をしないというわけだ。
これを読んでオヤッと思った。というのも、私の記憶では、この逸話は宮本武蔵と結びついていたからだ。何かでどこかで読んだはずなのだ。
ある宿場町に、手に負えない暴れ馬がいた。ある日、有名な剣豪がその暴れ馬の横を通りかかった。当然のようにその馬は暴れだしたのだが、剣豪はその馬をあざやかにヒラッとかわし、何事もなかったかのように通り過ぎてい行った。それを見ていた者たちは、さすが武道の達人と拍手喝采した。
後日、宮本武蔵がその宿場にやってきて、暴れ馬に近づいてきた。町の者たちは、宮本武蔵がすごい剣豪だとうわさで知っていて、宮本武蔵はどんなかわし方を見せてくれるのだろうと興味津々見守っていた。すると武蔵は、馬から遠く離れて通り過ぎ、何事も起こらなかった。周りの者たちは、武蔵は臆病だとがっかりした。もちろん武蔵の方が先の剣豪よりもはるかに上手なのであって、無用なリスクを避けることが剣の極意というわけだ。
この宮本武蔵の逸話をどこで読んだか思い出せないのである。検索してみても見つからない。そうこうしているうちに、暴れ馬の脇を避けて通ったのは塚原ト伝だという説が出てきた。何?卜伝?武蔵ではないというのか。私の記憶では、確かに武蔵ということになっているのだ。うーん、武蔵、卜伝、どっちなのだ。どっちでもよい話だが、気になってしかたがない。東郷平八郎は、武蔵か卜伝のこの逸話を教訓にしてまねていたのか。
あー、もやもやする。