悩んでいない人のためのカウンセリング 『子猫と権力と××× あなたの弱点を発表します』
2017/09/16
子猫と権力と××× あなたの弱点を発表します / 五百田達成、堀田秀吾 / クロスメディア・パブリッシング
これを読みながら、フッと思いついたことがある。それは、人には二つの相反する思い込みがあるんだなあ、ってこと。この件については後半で述べるとして、まずは本の紹介から。
『子猫と権力と××× あなたの弱点を発表します』を一言で表すならば「悩んでいない人のためのカウンセリング本」である。人には弱いものが少なからずある。いや、結構弱いものだのだ。にもかかわらず自分が弱いとはあまり思っていない。ここで言う「弱い」とは、「なんだかよくわからないけれど、心が動かされてしまう」こと。「なんだかよくわからい」から「弱い」という自覚がないのももっともなこと。例えば、美人、評判の店、プレミア、お金持ち、友人の年収、ネット、村上春樹、学歴、などなど。これらに対して、自分は弱いなあ、弱さをなんとかせんといかんなあ、とはなかなか思い立てないのである。
本書は、これら弱い対象を44個ピックアップし、それらの弱さとうまく付き合っていく方法、処方箋を紹介した一冊。自分の弱さを知るためのチェックリスト―解説―弱さを克服するための処方箋、の構成で、それぞれ4ページにまとめられている。例えば、
なんだかんだで『◯◯ランキング1位』は気になる
→「なんでこれが1位なんだろう?」と、理由を考えてみる有名人の脱税がバレると、ちょっとうれしい
→その人の努力や幸運をたたえる
といったところ。どれもこれもがあるあるで、なかなか痛いところを突いてくる。まずは自分が弱いことを知ることだろう。本書で説かれている処方箋の傾向は、何事も「ほどほど」で行ってはどうかな、にある。あんまり極端に振れると厳しいよ、ということだ。普段、自分がどう振れているかを感じ取ることは難しい。自分が普通と思っているからね。そんな「振れ」に気づかせてくれるのが本書の効用であって、それだけでも一読の価値ありでだろう。
全般に軽ーい感じで話が進む中で、もう一つイイなあと思ったことは、暗に、学術データ(主に心理学)を受け入れなさいよと行っているところ。多くの調査結果が「人ってこういう癖があるんですよ」と言っているのもかかわらず、「自分は違うもんね」と考えることは根拠がない。一般的な人の癖を一度受け入れてみると、新しい自分に気づけるかもしれないね。
以上のようなことをつらつら考えながら頭に浮かんだのが、冒頭に仄めかした「相反する思い込み」。これは何かというと、人は自分のことを考えるとき、どうやら場面によって二つの相反する思い込み、もう少し正確に言うと思いたがる癖があるということ。二つとは「自分は他の人とは違う」というのと「自分は他の人と同じだ」だ。この二つの立ち位置を自分の都合のいいように使い分けているのだ。
前者は、ファッションは個性が大事よねとか、詐欺に騙されるなんてバカだなあとか、「自分は平凡な人間じゃないんだ」と思いたい時に現れてくる。後者は、周りに「変わった人」と思われたくないときに現れる。空気を読む、に繋がっているのかもしれない。ある時は「自分は特別だ」と思い、またある時は「自分は特別じゃない」と、正反対の自分の立場を都合よく使い分けるとは、人ってなんとも勝手なものなのだなあ。むしろ、そうだからこそ平然と生きて行けるのかも。
本書はクロスメディア・パブリッシングさんより頂戴しました。多謝。