借金して大学へ行くのは割りに合わない
ちょっと前のニュースによれば、奨学金訴訟が激増しているらしい。この8年で100倍だとか。返済できない人が増える一方で、取立てが厳しくなったという掛け算によるものだろう。こんな状況に対して、借りたものを返させるのは当然という見方もあれば、教育の機会平等を損なうという意見もあるし、果ては貧困ビジネスなどという訳のわからぬ批判もある。立場、見方で意見は変わるから、ここではそれらをとやかく言うことはしない。ただ、この現象の根本的なところは、もはや奨学金が役に立たなくなってきたということだ。
奨学金は本来、単なる借金やローンとは違う。投資だ。大学などの高等教育を受けたいが、今その費用がないので融資してもらう。例えば、4年間で250万円つぎ込んだとすれば、卒業後にそれ以上のリターンが得られることが前提にある。今やその前提が成り立たないということだ。「大学卒」の肩書に250万の価値はないということ。景気不景気の話ではないと思う。かつて高等教育を受けることは稀少価値があったからが高収入につながった。今はどうか、言わずもがなである。身も蓋もないことを言えば、東大に行くのなら今でも期待値はかなり大きいので奨学金を借りるのはおそらく得だろう。
そんな奨学金であるが、貸付額がどんどん増えている。その事業費はすでに1兆円を超え、10年間に約2倍のペースで膨らんでいる。奨学金には税金が投入されている。奨学金が価値を産まない今となっては、文部科学省は不良債権に税金をジャブジャブつぎ込んでいるようなものなのである。