ホッホグルグル 『ねにもつタイプ』
2017/09/16
講談社エッセイ賞を受賞した岸本佐知子の『ねにもつタイプ』を読み終えて一言、「畏れ入りました」。
本書に収録されているのは雑誌『ちくま』に連載されていた文章48編で、エッセイと言えばエッセイなのだろうが、ある意味ファンタジーだ。日常的な部品を使って、凡人では想像つかない世界へ引きずり込むのだから。日常的な部品は、トイレットペーパーであったり、古いミシンであったり、図書館の書籍カードであったりする。ただ、ここまでなら「面白いなあ」で片付けてしまうこともできるのだが、最初に「畏れ入りました」と書いたのは、次の一文があったからなのだ。
それでも、ごくたまに、そう、脱線思考三百件につき一件ぐらいの割合で、もしかしたらこれは実用化できるのではないかと思わせるような有益なアイデアが浮かぶこともある。
(『ニュー・ビジネス』p46)
これに続いて3件のアイデアが披露される(ご本人はその他にもまだまだあると言っておられる)。ということは、こんな奇想天外な妄想いや発想が少なくとも900はあるということで、あわよくば10000くらいお持ちなのだ。一つや二つ、10や20なら誰でも妄想できる。しかし1000を超えるとなると……。岸本佐知子畏るべし。
文庫になって再登場!