脳の中にある宇宙 『宇宙創成』
2017/09/16
すごい!!! 大興奮、大感動の一冊!
『宇宙創成/サイモン・シン/新潮文庫』は早々と2009年のベストに決定なのである。いやいや、それでも生温い。私のall-time top 10に加えることにする。
何がそんなにすごいのか?
本書は、最終的にはビッグバンにたどりつく物語だ。しかし、ビッグバンを解説することが目的ではない。人類がビッグバンという宇宙の始まりにたどりつくまでの偉業を鮮やかに描き出そうとし、それが見事に成功しているのだ。
150億年前、宇宙がどのようにして始まったのかを人類は考えだしたんですよ。思いついたのではない、考えだしたんです。ビッグバンを知らしめるために、サイモン・シンはその宇宙論を紀元前三世紀のエラトステネスから語り始める。エラトステネスが初めて地球の大きさを測り、月や太陽の大きさまでも算出したときからなのだ。理論と観察とによって紡ぎだされる宇宙論。その着実な進歩、科学のなんと美しいことか!
地動説、相対性理論など数々の理論がどのように登場し、どのように証明されてきたのか。遥か彼方の銀河までの距離をどうやって測るのか。本書を読み進むにつれ、人類の偉業に驚くばかりであり、人類に不可能はないのではないかと思わせてくれる。脳の中に、150億年の時間と果てしない宇宙空間がすっぽり収まっているのである。そう思うと、もう震えが止まらなくなってしまった。
是非とも読んでいただきたい、読まなきゃ絶対損、の一冊なのである。私なんぞ、文庫本で読んでから、単行本を注文しようと考えている。
本書は、『フェルマーの最終定理』、『暗号解読』と、立て続けにスゴ本を発表してきたサイモン・シンの3作目。こんな決定打をはなってしまってこの先大丈夫なのかと心配してしまうが、すでに次作『TRICK OR TREATMENT?』が発表されている。邦訳が待ち遠しい。