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中国の変化をメディアを通して観測する 『中国報道の「裏」を読め!』

      2017/09/16

レビュープラスさんから献本いただきました。いつもありがとうございます。

『中国報道の「裏」を読め!(COURRiER BOOKS)/富坂聡/講談社』は、クーリエ・ジャポンに連載されていた名物連載記事(コラム)をガシッと固めた一冊。単独で読んでいたときも面白かったが、本という形に編集されたことでグッと濃厚になった。

中国関連書籍は、それそれはもう数多ある。例えば「新書マップ」で「中国経済」「現代中国」「中国社会」のカテゴリを覗いてみると、82件もの新書が検索される(新書だけで!)。そんな中で本書の特徴は、中国現地のメディアが国内向けに発信する「新京報」「南方週末」といった新聞・雑誌などの記事を読み解き、最新の中国を易しく解説している点だ。中国の報道と聞くと、「ホンマかいな。どうせ共産党に検閲された統制報道だろう」との先入観があるが、最近はどうやらそうでもないようだ。メディア、特にテレビは広告費だけで成り立っていて、西側メディアとたいして変わらない。

現実に当局の手綱はどれほどの効力を持っているのか。
もし支配が最も強力だった時代を基準とすれば、おそらく力は半減していると見て間違いない。

したがって、本書はかなり中国の生の声に近いはずだ。さらに情報源が身近だから、解説が生活感とともに伝わってくる。たとえば、同じようなテーマを取り扱っている好著『中国激流 13億人のゆくえ/興梠一郎/岩波新書』と読み比べてみれば、クイクイと読みやすい。

序章 中国メディアの現在
第1章 中国経済の危うい実態
第2章 変容するナショナリズム
第3章 上に汚職あれば、下に不正あり
第4章 社会に蔓延する黒いストレス
第5章 中国の未来は明るいか?

経済、ナショナリズム、官僚汚職、ストレス、未来、それぞれのテーマで中国の現状と課題が浮き彫りになっていく。そして収斂する先は大多数の貧困だ。2009年、中国がドイツを抜いて輸出額世界一に躍り出る。活発な経済活動が生み出す格差と貧困。それが不満と嫉妬を増大させ、子供の誘拐・売買や「人肉検索」といった具体的な現象となって現れてきていると言う。さらに進めれば、中国での貧困は日本でのそれとは意味合いが違う。中国では農民の反乱が最大の問題。歴代の政権(王朝)が倒れる原因。これまでの歴史において、陳勝・呉広の乱、黄巾の乱、黄巣の乱、紅巾党の乱、太平天国の乱そして共産党革命と、貧困に喘ぐ農民たちは時の権力に反乱し、国を造りかえてきた。支配者たちの命に関わる問題なのだ。そこで為政者は貧困による不満を打ち消そうと躍起になっている。本書は、「労働契約法」や農村改革などを詳しく解説し、中国政治のダイナミズムを伝えてくれる。

以上のような中国社会の課題とは別に、いわゆる中国人気質についても読み取れて面白い。ステレオタイプかもしれないが、

  • 中国人:現実主義、支配されたくない(支配したい)
  • 日本人:理想主義、支配されたい

という差異が浮かび上がってくる。そして、中国人の振幅の大きさ、スケールの大きさを痛感した。
たとえば、横領の平均額は45億円、汚職最高金額は200億円、公費の乱用で一度に1000万円の酒を買い、接待用タバコに年間240万円を使う。
世界的に非難されている知的所有権への意識のなさについては、

日本の技術を不正に盗むとかコピーするとかいうと、日本人はとかく「中国人はけしからん」という議論に終始してしまいがちだ。しかし、ここで忘れてはならないのは、コピーであろうと何であろうと「造ってしまえ!」という発想と意欲がそこにはあるという事実だ。

とあり、

同じ漢字文化圏であっても、中国の事情はまさに鶏口を目指すエネルギーに満ちている。どこか去勢されてしまったような日本経済の現状と比べると、彼らのモチベーションの高さは羨ましい限りだ。

との意見が語られる。
先の農民蜂起と併せて、彼らにとって人生、日々戦いなのだ。外交にしろビジネスにしろ、彼らの行動の源泉を改めて認識した。日本人はありがたく支配を受けるGoogleに対しても真っ向戦う中国の根っこがそこにはある。

反中・親中を一先ず置いて、まさに今の中国の素顔を知るにはうってつけの一冊だ。あー、面白かった。

中国報道の「裏」を読め!(COURRiER BOOKS)/富坂聡/講談社
中国報道の「裏」を読め! (COURRiER BOOKS)

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