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もうどっぷり笠原郁ファンです 『図書館戦争』

      2017/09/16

はっきり言って予想をはるかに上回る面白さ。待ちにまった文庫化を機会に手に取った『図書館戦争/有川浩/角川文庫』、評判が高くて期待していた一方で、ライトノベルということでフワフワしてたらどうしよう、という不安もあったのだが…。なんのなんの、重さ充分。歴史、機構、法解釈、市街戦など、仮想世界が徹底的に書きこまれているので読み応えがある。どっぷりはまれる痛快エンタテイメントだった。

時は2019年(正化31年)、公序良俗を旗印に有害図書を取り締まるメディア良化委員会に対抗するため、図書館は武装化し、図書隊を結成していた。メディア良化委員会の検閲から救ってくれた憧れの図書隊員のを追って、笠原郁は図書防衛員を志望する。そんな彼女を中心に繰り広げられる恋と笑いと、そして戦闘。
物語はいきなり、

念願の図書館に採用されて、私は今―
毎日軍事訓練に励んでいます。

と始まる。この書き出しで参っちゃった。その後郁ちゃんは自衛隊さながらの訓練の日々を送るのだ。上官に絞られながらも健気に訓練に耐え、明るく一人前の防衛員を目指す郁ちゃんの愛らしさはたまらない。郁ちゃんがんばれなのである。おじさん殺しなのである。

こんなことばかり言っていては、ただのスケベなおじさんになってしまうので、少しは理性的なコメントを。
おじさんがラノベを楽しめるかどうか、それはひとえに「大人をしっかり書いているか」にかかっている。その点、本作品は大人がカチッと書かれていて、幼稚さがない。さすが有川浩。メインキャラの堂上、小牧、玄田もさることながら、サブキャラとして配置している折口と稲嶺が大人を演じていてよい。例えば折口にはこんな台詞を吐かせている。大人びた中学生に対して、

「うん、それすごい正論ね。でも正論って面倒くさいのよ」
……
「……義理も縁もない他人に何かを頼むとき『協力してくれるべき』とか『してくれるだろう』とか甘い見通し持ってる奴は絶対に失敗するわ。協力って期待するものでも要求するものでもなくて、巧く引き出すものなのよ」

僕の一番のお気に入り台詞だ。
稲嶺が暴徒に襲撃された場面のひと言もかっこいい。

「君たちは―公序良俗を謳って人を殺すのか!」

このように、大人への敬意を匂わせる点は、富士見ファンタジア文庫に収められているにもかかわらず、僕を夢中にさせた野尻抱介のロケットガールシリーズと通じるところがある。てなことを言うと、今度は実におっさん臭くなってしまった。

何はともあれ、郁ちゃんと図書隊員の優しさあふれる活躍を満喫できる一冊。早速2作目『内乱』に取り掛かろうっと。

 

図書館戦争 図書館戦争シリーズ(1) (角川文庫)

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