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水と熱とがあれば生命は生息する、もちろん宇宙にも 『世界をやりなおしても生命は生まれるか?』

      2017/09/16

世界をやりなおしても生命は生まれるか? / 長沼毅 / 朝日出版社
世界をやりなおしても生命は生まれるか?

宇宙へ行って何かを見つけた。それは生物なのか生物でないのか、どうやって判断する?

そんな話題を交え、手を替え品を替えながら「生命」のことをどんどん突き詰めて考えていくと、こんなところまで行っちゃうのかというのが『世界をやりなおしても生命は生まれるか?/長沼毅/朝日出版社』。面白すぎてヤバいです。

例えば、「生物」と聞くと僕たちはたいてい地球のごく表面(海も含めて)に生息している生物のことを思い浮かべる。でも地球に存在する生物は、そんなものだけじゃないのだそうだ。光がない場所にも生物はうじょうじょいるのだ。太陽の光なんて一切届かない海底火山の付近にも、地底深くにも。むしろそっちの方が生物量は多いかもしれない。生物が存在できる最高温度は122℃。そんな頃合いの熱があって(火山活動とか)水があれば、生命の存在する可能性がある。地球以外にそんな場所があるのかといえば、ある。地球のすぐ近くにある木星の衛星エウロパはその有力候補なのだ。著者の話を聞いていると、いつの日かエウロパにある生命が発見されるような気がしてくる。なんかムズムズしてくる話ではないか。ちなみに、著者はパンスペルミア説(地球の生命は宇宙から来たという説)の信者だ。

例えば、誰も見たことがない進化の過程を見る方法としてエヴォ・デヴォという方法がある。ゲノムの文字列を幾つかの法則に従って解析していくと、進化の過程、系統樹が現れてくる。この方法によって、現存するボディ・プランは8~9億年前にすべて出揃っていたことまでわかってしまう。5.4億年前のカンブリア紀に至って、それらのボディ・プランが爆発的に出現した。のが。蓄えられていたボディ・プランが発現するまでになぜ3億年もの時間差があったのか、なんて謎解きは極上のミステリだ。

例えば、油滴でできたケミカルライフなるものがある。膜があって代謝をし、分裂して増えもする。この化学物質でできた物体ははたして生物と呼べるのか?

終局は複雑系へと展開する。「生命とは非平衡開放系における散逸構造である」という捉え方を踏まえ、生命が宇宙の死を早めているのではないのか、てなところまで話が飛んでいく。

様々な角度から生命の本質とは何かを考えさせられる一冊。表紙を開いたら止まらない、一気読みの科学読みものだ。

 - 自然科学・応用科学, 読書