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星までの距離を測る(ベッセル教授からの手紙を読んでみる)

      2017/05/07

星までの距離の測り方――ここでは比較的近く(100光年くらいまで)にある星だが――となるとたいていの解説には三角測量のことが紹介されている。地球が太陽の周りを公転することで星の位置がずれて見える現象(年周視差)を利用するものだ。図1で、Eが地球、Sが太陽、Tが距離を測る星。年周視差をθとすると距離E1Tは
E1T=ES/sinθ
で求まる。

星までの距離の測り方

これはえらく簡単だ。でもちょっと待てよ、なのである。原理はそうなんだろうが、どうもごまかされているような気がするのである。なんかもやもやするというか。

星ってじっと同じ場所に留まっているわけじゃないでしょう。ビュンビュンすごい速さで動いてーー固有運動してーーいる。もやもやの原因は、上の図で星が1カ所に留まっているように描かれているところにあったんだな。年周視差と固有運動とを単純に等速円運動と等速直線運動として足し合わせると、星の位置を観測し続けたら、
star movement
とか
star movement
とかみたいに見えるはずだ。
そうなのだ、当然のように三角形が描かれているけれど、星は動いているので、そもそもθを測れるのかという疑問が湧いてくるのだ。だから解説には、「年周視差が測定できれば」と、そっとただし書きが付いていることも多い。でも測定の仕方は教えてくれない。これじゃ星までの距離は測れないじゃない。どうすれば年周視差を求められるのだろう。

世界で初めて年周視差を測定したのはベッセルである。1838年のこと。ベッセルはどうのようにして年周視差を測定したのか。こうなれば元の文献をあたってみるしかあるまい。ということで、ベッセル教授からの手紙(A letter from Professor Bessel to Sir J. Herschel)1)を読んでみた。

まず、

私は、はくちょう座61番星 (61 Cygni)についてこの調査を行うことに着手しました。この星は、固有運動が大きいので最高のものですし、連星なのでより正確に観察できる利点がありますし、極の近くにあるため年間の多くを通じて地平線から十分な距離で観察できます。

年周視差を観察する星としてはくちょう座61番星を選んだのには三つの理由があったのね。固有運動が大きいと年周視差も大きいことが予想されるので測り易そうだということだろう。やはりはくちょう座61番星はビュンビュンすごい速さで動いているのだ。ではどうするのか。

私はその連星を取り囲む小さな星の中から、9等級と10等級の間の二つの星を選びました。そのうちの一つ(a)は連星の方向の線にほぼ垂直、もう一つ(b)はほぼこの方向にあります。私はヘリオメーターでこれらの星の距離をはくちょう座61番星の中点から測定しました。毎晩観測を16回繰り返しました。大気が異常に不安定になったときには、より多くの繰り返しました。しかしこれにより、より好ましい夜の観察が少なくなってしまい、精度が達成されなかったことを恐れています。大気の不安定さは、繊細な天文学的観測における大きな障害です。最高の夜だけ観察しない限り、その不利な影響を避けることはできません。

なるほど、近くにあるマーカーになる星を決めるのね。そしてその星とはくちょう座61番星との距離(角距離)を測定し続ける。おそらくこういうことだ。図2で、Uはマーカー星。半年の間をあけたUとTとの角距離をα、βとすると、年周視差の大きさθは、
θ=α-β+γ
となる。ここでγはマーカー星の年周視差だが、この星ははくちょう座61番星より遥か彼方にあるので、γは非常に小さくて0とみなすと、
θ=α-β
で求めることができるだろう。

星までの距離の測り方

ベッセルはこのα、βを、1837年の8月から翌38年の10月まで測定している(毎夜16回以上!)。

で、ここまでは読めるのだが、この先一気に難しくなる。

次の表は、私が測定した距離の値すべてです。大気差と光行差の影響を取り除き、1838年の初めからの差とした値です。

として膨大な測定距離のデータリストを挙げ、さらに距離を時間の関数とし、それを解くことで年周視差を求めていく。でも読み解けない。ぼくに天文学の力がないのか、英語の力がないのか。両方だろう。

なので途中をすっ飛ばすが、

それゆえに、はくちょう座61番星の年周視差の最も確からしい値は0.3136秒であることを見いだしました。

と結論されている。さらに、

年周視差を0.3136秒と仮定すると、太陽からはくちょう座61番星までの距離は太陽と地球の平均距離の657700倍、10.3光年であることがわかります。

とはくちょう座61番星までの距離が求まった!

悔しいけれど読み解けたのはこれくらいまで。測定の仕方はなんとなくわかった。でもどう計算して角度を決定するのかはわからずじまい。この記事を読んでお詳しい方がいらっしゃったら是非ともご教授いただきたい。

<参考文献>
1) F. W. Bessel, Monthly Notices of the Royal Astronomical Society, Vol. 4 (1838), p.152-161 →サイト

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