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熱電対

   

温度を測る道具となると真っ先に頭に浮かぶのは熱電対である。理系なら多いんじゃないかな、そんな人。普段の生活では見かけないから馴染みない方が多いだろうけれど、工業生産や科学実験で温度測定するとなると、まず熱電対なのだ。なんせ手軽で精度もかなりよい。

熱電対は2本(2種類)一組の金属線。見た目はただの針金だ。この2本の線の一端をくっつける。ねじってより合せるだけでもよいけれど、より正確に測りたければ溶接することが多い。二つの金属が溶け合った球を作るのだが、きれな球にするのにはちょっと慣れが必要だ。反対側の端は電圧計につなぐ。くっつけた先っちょを火であぶると電圧が上がってくるのがわかる。この電圧が温度に対応している。
これだけ。

どんな種類の金属でもよいのだが、もっとも普段使いされているのはアルメルとクロメルのペア(K熱電対と呼ばれる)だろう。どちらもニッケルを主成分とした合金。これで-200から1000℃まで測れるからたいてい間に合う。ちなみに、アルメルもクロメルも登録商標なのだが、あまりにもポピュラーになったので一般名詞みたいになった。ホッチキスやセロテープみたいなもんだ。

1000℃以上まで測りたいときには白金-白金ロジウム(R熱電対とかS熱電対とか呼ばれる)を使う。0から1400℃くらいまで測れるが、ご覧のとおり貴金属である。高価。1mで数万円する。無造作には取り扱えない。ケチケチ使うし――溶接したところを切り離すときは付けた根本ぎりぎりの位置で切る――、使っていって短くなった屑も併せて厳重な管理が必要だ(丸めてポケットに入れちゃダメ)。

なんでこんなもので温度が測れるのかというと、金属の生まれ持った性質としかいいようがない。金属線(線に限らないが)の両端の温度に差があると電圧が生じるから。トーマス・ゼーベックが最初に(1821年)この現象に気付いたのでゼーベック効果とよばれる。生じる電圧の大きさは金属の種類ごとに違うので、2種類を組み合わせるとその間に温度差に応じた電位差(起電力)が測れる。よく使われる熱電対(K、R、Sなど)には温度と起電力との対応表(起電力表)が完備されているので、測った電圧を温度に換算できる。これだけで温度が測れました。ゼーベックさんエライ!

さてここで疑問がふつふつと湧いてくる(ここからが本題だったりする)。温度起電力換算表をどうやって作ったのか、ということだ。K熱電対の場合、起電力が40mVだとだいたい967℃となっている。40mVのとき967℃だとどうしてわかったんですか?967℃という温度をどうやって測ったんですか?という疑問だ。別の言い方をすると、熱電対の校正では基準となる温度――たとえば銀の凝固点(961.78℃)――を測ったりするんだけれど、この961.78℃はどうやって測ったんですか?という疑問。これって熱電対以外の道具で測らなければいけない。0℃と100℃は水で決めた温度だからよしとして、0℃以下、100℃以上、それも1000℃もの温度をどう決定するのか。実はこれはあらゆる温度計に共通する疑問なのだ。先人たちが懸命に測ったのだろうけれど、最初の最初どうやってはかったの
か。基本を考えれば気体温度計なんだろうなと推測するのだが、これが意外と調べられない。うーん、もやもやする。

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