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互いに、三丈離れて― 『鴨川ホルモー』

      2017/09/16

鴨川ホルモー 謎のサークル京大青竜会にふらふらと入会してしまった安倍君がホルモーにかけた大学生活を綴った物語。一言でまとめると「京大生伝奇青春小説」とでもなろうか(ぜんぜん一言じゃない)。
本書『鴨川ホルモー/万城目学/産業編集センター』はいくつかの読み方(楽しみ方)ができる小説だと思う。

一つ目は「ホルモー」を楽しむこと。ホルモーとは古(いにしえ)より伝わる鬼と連携したウォーゲームのような競技で、本来の意味するところは……、読んでもらうしかない。この小説においては、著者が「ホルモー」を考え出した時点で勝ったって感じだ。

二つ目は青春小説としての楽しみ。ただこれはありがちな恋愛と友情のお話。したがって著者はホルモーこそ書きたかったのだなと考えられる。

三つ目は変わった京都案内として。「おらんじゅ」や「西院の自動車教習所」(ってデルタのことやな)など私としては懐かしいディテールにニタニタさせられた。
そして四つ目は京大生の恋愛解説書としての一面。いまどきの大学生とは思えぬ初心な恋愛の行方を追いつつ、京大生の恋愛形態について勉強してみましょう。
文章はうまいとは思わないけれど、ホルモーの勢いで引っ張っていってくれるすこぶる楽しい小説だ。楠木はけっこうかわいいんだろうな。
敢えて蛇足。最近出版された続編『ホルモー六景』を書店でパラパラめくってみたら、マンガチックな挿絵入りになっていて、ラノベに両足を踏み入れた感じでちょっとがっかり。

 - 小説, 読書