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138億年前、宇宙で何が起きたか 『宇宙背景放射』

      2017/09/16

『宇宙創成』で宇宙論の凄みにはまって以来、その手の本についつい食指が動く。だからといってきちんと勉強するわけでもなく、面白そうなものが目につけば読み散らかしているだけなんだけど。

今回目を引いたのが『宇宙背景放射 「ビッグバン以前」の痕跡を探る / 羽澄昌史 / 集英社新書』。ストレートで飾らないタイトルが素敵だ。宇宙とは何ぞや、と大上段に振りかぶることなく、急所を槍で突いてくるような。

宇宙背景放射(宇宙マイクロ波背景放射、CMB)は、全天から満遍なく届くかすかな光。1964年、ベル研究所のペンジアスとウィルソンがひょんなことから発見した(鳩の糞掃除の逸話が有名だ)。このCMB、ビッグバンが起こったならば存在するはずだと予言された光とピタリ一致した。なものだから、当時はホンマかいなと思われていたガモフのビッグバン仮説の正当性を強力にサポートすることとなった。すなわち、ビッグバンが起こった138億年前、正確にはその38万年後、に生じた宇宙最古の光なのである。

そして今、CMBがとても熱いらしい(CMB自体は−270℃と超冷たいのだが)。このCMBをもっともっと緻密に測定解析すると、ビッグバン以前の宇宙のこと、インフレーションと呼ばれる宇宙のべらぼうな急膨張、がわかる(かもしれない)らしいのである。目もくらむようなすごいことではないか。

ここで著者が登場する。素粒子物理学者で実験物理屋の羽澄先生はCMBにぞっこん惚れ込んでしまった。で、何をしているかというと、チリの高地アタカマ砂漠の実験施設「ポーラベア」で、「原始重力波によるCMBのBモード偏光」を探し求めている。もう難しすぎてようわからんが、これが見つかればインフレーション仮説の証拠になるのだそうな。ビッグバン前の宇宙の様子が見えてくる。そしてさらにその先は、一般相対性理論と量子論と一本化させたシンプルな「宇宙のルールブック」へとつながっている。

『宇宙背景放射』には、そんな宇宙論の最前線がギュッと詰まっている。

宇宙背景放射 「ビッグバン以前」の痕跡を探る / 羽澄昌史 / 集英社新書
宇宙背景放射──「ビッグバン以前」の痕跡を探る (集英社新書)

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