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まだこの世は、わからねぇことだらけだ! 『精霊の守り人』

      2017/09/16

精霊の守り人 (新潮文庫 う 18-2)ファンタジーの衣装をまとっていたのでこれまで手を出さなかったのが悔やまれる。『精霊の守り人/上橋菜穂子/新潮文庫』は、ファンタジー嫌いの私が充分に楽しめた「冒険小説」だ。巻末解説の恩田陸氏の一言がすべてを言い表している。

下品な言い方だが、「モノが違う」。

これだけでは味気ないので自分なりに整理しておこう。

一番に強調したいのは、登場人物たちが敵や困難に対して智恵と肉体とでその難局を切り抜けていく点だ。ファンタジーなどと言う前に、立派な「冒険小説」なのだ。主人公のバルサは鍛錬を重ねた武道家であり、彼女を追う「狩人」たちも鍛え抜かれた戦闘集団だ。タンダは薬学を究め、物語に彩を添えるシュガは命を懸けるがごとくに文献を読み漁る。登場人物たちの体を張った行動が熱いのだ。だからおじさんでものめり込むことができる。安易な魔法を乱発する安物ファンタジーなんて糞食らえなのだ。

また、物語世界を構築するに当たっては、国のあり方、社会のあり方を踏まえて書かれている。星読博士が堕落していく様はかつての武家、昨今の官僚と重なってしまう。

さて、物語の本筋とは離れるが、バルサとチャグムが逃亡のさ中に摂る食事がなんともうまそうだ。『鬼平』じゃないけれど、物語を進める上で食べ物のディテイルを書き込むことの大切さに改めて気づかされた。食事をする登場人物たちはとても幸せそうだし、それを読むこちらまでうれしくなってくる。

次を読む価値あり。

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