すぐびん

山歩き、読書や工作、おじさんの遊んでいる様子

検索

世間の分布を変えていくために『不透明な時代を見抜く「統計思考力」』

      2017/09/16

小さい頃から数字や数値データが好きだった。母親からいろいろな本を与えられたが、開いて読みふけるのは百科事典と子供向け統計年鑑だった。少年少女文学全集などには見向きもせず、年鑑をながめていたわけだ(ま、その反動で、大人になってから名作と呼ばれる小説を読むことになるのだが)。当時大阪に住んでいて、「大阪府って小さいなあ」と思いながら、都道府県で一番小さいのは香川県だと知ったのも年鑑からだった。今でもわが家の財政、車の走行距離や燃費のデータを取ってグラフを描いて遊んだりしている。仕事でも数値データを欠かすことはできない。

そんな私だから、『不透明な時代を見抜く「統計思考力」』が言っていること、数値データ分析は大事だし面白いということは充分承知しているつもり。だからといって、「わざわざ言われるまでもない」かというとそうでもないのが本書のよいところだ。

本書を読んで、自らデータを取ってきて、そのデータを眺めてとことん考えるという行動力に欠けているなあと気づかされた。仕事で扱う数値はかなり「吟味しているが、それ以外となるとちょっと自信が無い。そこで巻末の「統計・文献ガイド」がありがたかった。これから折を見ていろいろ分析してみよう。

ここまでは個人的な話。次は一般論。

データ分析における問題は、データをどう解釈するかなのである。下手をすれば同じデータをもって、180度異なる意見だって言えちゃうのである。疑問を挟む余地の無いデータを採取できれば問題ないのだが、それはなかなか難しい。自然科学でも難しいのに、社会科学においておやである。だから、データに基いて言っているからといって、他人の意見を信じちゃダメ。著者も言っているように、自分で考えて納得しないといけない。

それともう一つ。データをもって他人を説得するのはなかなか難しい。データより大切なものがあると信じている人は世の中大勢いるのだから。そんな人たちにはデータは無意味であり、かえって反発を食らう可能性もある。まずは自分の中で有効に活用するのがよいと思う。自分はどう動けばよいのかの判断材料として。そうしているうちに世の中の分布が少しずつ変わっていくかもしれない。

不透明な時代を見抜く「統計思考力」/神永正博/ディスカヴァー・トゥエンティワン
不透明な時代を見抜く「統計思考力」 (日経ビジネス人文庫)

 - 社会, 読書