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アンチ・ヒーロー、ヴェネツィア『海の都の物語 ヴェネツィア共和国の一千年 1』

      2017/09/16

一石三鳥を狙って、『海の都の物語 ヴェネツィア共和国の一千年/塩野七生/新潮文庫』を読み始めた。

<鳥1> 生まれてからずっと日本で暮らしていると、理解しにくい概念がある。他文明や他文化の仕組みがすっと頭に入ってこないわけで、その一つに「国が興る」「国が滅ぶ」というものがある。何度政権が交代しようとも、延々と単一王朝が続いているからだろう(満州国があるにはあるが)。世界を見ればほとんどの国々が現れては消えているわけで、その様を少しでも具体的にイメージしてみたい。

<鳥2> 西洋の中世史にとんと馴染みがなく、何がなにやらよくわかん。わからなくても生活するには一向に差し支えないのだが、知りたい。近世になればいろいろ小説もあるので、それらを読めば肌で感じられるのだが。

<鳥3> 鳥1と関連するが、国の成り立ち、国の理念について様々な例を知りたい。というのも、創作のヒントになるのではと思うからだ。異世界を描くためには世界の成り立ちを形作ることが必要だ。リアリズムのある私的幻想、世界観というやつだ。いろいろな国のパターンを知ることで、世界観にも幅や厚みが出てくるのではとの魂胆を持っている。

これらの欲求に対して、本書は最適だ。まず、塩野女史の著作だということ。読みやすくわかりやすい。塩野史観がどうだこうだなどはこの際問題ではない。司馬史観の是非によらず司馬遼太郎作品が圧倒的に面白いのと同じだ。そしてテーマがヴェネツィアという点。ローマ帝国崩壊からナポレオンまで約1000年間栄えた共和国、中世西洋を知るには格好の対象だ。

 

海の都の物語〈1〉―ヴェネツィア共和国の一千年 (新潮文庫)

海の都の物語〈1〉―ヴェネツィア共和国の一千年 (新潮文庫)

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塩野 七生
新潮社
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文庫の第1巻では、ヴェネツィア誕生から第4次十字軍までが語られる。ヴェネツィアが海運国であり海軍国であったこと、商業主義であると同時にそれが行政主導で運営されたこと、など、興味が尽きることはない。ヴェネツィアがアンチ・ヒーローに位置付けられていることも初めて知った。圧巻はヴェネツィアが現実主義的国家であったことにつなげての、現実主義と理想主義とに関する見解である。

「現実主義者は、それが個人であっても国家であっても、なぜ常に憎まれてきたのだろう」
……
「現実主義者が憎まれるのは、彼らが口に出して言わなくても、彼ら自身そのように行動することによって、理想主義が、実際には実にこっけいな存在であり、この人々の考え行うことが、この人々の理想を実現するには、最も不適当であるという事実を白日のもとにさらしてしまうからなのです。……」

この対比は強烈に印象に残った。

コンスタンティノープルを手中に収め、今後どのようにヴェネツィアが変貌を遂げていくのか楽しみだ。

あれこれよくばっているので、虻蜂取らずにならないように気をつけないとね。

 - 社会, 読書