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ああ、無事だよ、白石亜紀 『太陽の簒奪者』

      2017/09/16

太陽の簒奪者 / 野尻抱介 / ハヤカワ文庫JA
太陽の簒奪者 (ハヤカワJA)
SFを勉強しようと思い立ち、そのテキストとして野尻作品をかため読みすることにした。最初に取り掛かったのは、『太陽の簒奪者/野尻抱介/ハヤカワ文庫』だ。

水星の太陽面通過の日、水星表面からそびえ立つ塔が観測された。観測が進むにつれ、その塔は噴き上げられた鉱物資源であり、それらが太陽をとりまく直径8000万キロのリングを形成しようとしていることが明らかとなる。リングの拡張により、日照量が激減し、地球は壊滅状態に追い込まれる。いったい何者が、何の目的でリングを創造したのか?当初、塔の存在を目撃した観測者の一人、白石亜紀はリングの謎に引き込まれ、リングと対峙することとなる。
その先どう展開していくかをここに書くわけにはいかない。読んでみてのお楽しみだ。ファーストコンタクト物というところまでは明かしてもよいだろう。

さすがに各所で絶賛されている作品だ。緊張感が途切れることなく、宇宙へ、軽々と宇宙を飛びかうSFもどきファンタジーでは決して描かれることのない現実的な宇宙へ、読者を導いてくれる。例えば、宇宙に身を投げ出すことの重大性を次の表現が教えてくれる。

「(有人船に)乗りたそうだね?白石君」
「乗りたいです」
「放射線漬けになるよ」
「いいんです。それで何人乗りなんですか」

SF経験の乏しい小生の評価だが、本作品は時間軸のスケール、意外性とその説得力の観点で、アーサー・C・クラークの『宇宙のランデヴー』を上回っていると思う。

最後に、小生が愕然とさせられた一文を書き出しておく。

「ああ、無事だよ、白石亜紀」

これだけでは何のことやらおわかりいただけないだろうが、それでもいいのだ。この一言を搾り出した野尻抱介恐るべし。さあ、次の野尻SFに行くぞ。

こちらもいかが 野尻抱介の本

 - 小説, 読書