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クラシック音楽の系譜が一望できる 『西洋音楽史』

      2017/09/16

クラシック音楽に少しでも興味があるのなら、そして音楽の素人であればあるほど、『西洋音楽史―「クラシック」の黄昏』は読んでおいて損のない、いや絶対読んでおきたい最良の音楽解説書だ。力作である。さすがは老舗の中公新書、地味なタイトルを装いつつビシッと良書を打ち出してくる。釣りタイトルを連発する新入新書とは格が違うところを見せつける。

21世紀の極東日本でも、クラシックは身近な音楽だ。そんなクラシック音楽はどのように誕生し、発展し、隆盛を極め、そして衰退していったのか。音楽だけが一人勝手に現れたわけではもちろんない。西洋の政治、宗教、社会の変遷の中で変化し続けてきたわけで、本書はその流れを易しく解き明かしてくれる。全230ページの中で、モーツァルトやベートーヴェンが登場するのは100ページを越えてから。彼らの誕生の前に、中世グレゴリオ聖歌、ルネサンス、バロックと千年もの歴史を要している。

音楽無知の私にとって、本書の内容は驚きの連続であった。濃い霧がはれるように、バッハが、ベートーヴェンが、マーラーが輪郭を現した気がした。例えば、

  • 「西洋音楽」「西洋芸術音楽」とは何か?
  • 音楽は聞くものではなかった!
  • 作曲家はいつ誕生したか?
  • ルネサンスが音楽を美にした。
  • ハイドン、モーツァルトとベートーヴェンとの決定的な違いは?

などなど。

文字を読んだって音楽がわかるはずがない?いえいえ、文字を読むことで理解できる音楽があります。その上で、「ここはどうしても音が欲しい」と思ったら…、YouTubeの出番です。本書片手にYouTube、あると思います。うーん、いい時代だ。

本書はもちろん音楽史について書かれているのだが、その効果は音楽だけには留まらない。政治・宗教・社会的背景を踏まえて説かれているので、音楽と同様にそれらを基盤とする西洋絵画や建築物を見る目にも応用が利く。

西洋音楽史―「クラシック」の黄昏/岡田暁生/中公新書
西洋音楽史―「クラシック」の黄昏 (中公新書)

 - 人文, 読書