「ゴロ」?「萌え」? 『萌式ゴロ萌え日本史』
2017/09/16
萌式ゴロ萌え日本史 / 不知火プロ(小和田哲男 監修) / 双葉社
本が好き!さんから献本いただきました。いつもありがとうございます。
数(かず)に強いのも大事だが、数字に詳しいのもスゴいと思うのである。定数や物のサイズなど、様々な数字が正確にスラスラ出てくる人を見ると、「カッコイー」とほれぼれしてしまう。そんな数字の一つに年号というのもあって、1903年にライト兄弟が人類初飛行に成功した時にはね、とかサラッと言ったりすると、なんかカッコイイのである。しかし残念ながら、私は数字を覚えるのがとっても苦手だ。そんな私の目に留まった『萌式ゴロ萌え日本史/不知火プロ(小和田哲男 監修)/双葉社』、これは福音か、これならいけるかも。
歴史上の出来事を萌えるゴロとイラストとで覚えちゃおう、というのが本書の趣旨。この狙いは大賛成である。年号なんて無味乾燥なもの、覚えるのにどんな手段を使おうが勝手なのだ。楽に覚えられるのなら、それに越したことはない。だから私もいい歳をして、「萌えながら年号丸暗記できるなんて最高!」と、勇んで本書を読み始めた。しかし、ウーン、これはいかんだろう。以下、献本いただきながら申し訳ないが、本書へのダメだしである。
まず「ゴロ」についてだ。これには2点ある。
一つめ。実にわかりにくい。例えば次のゴロは何を表わしているかおわかりになるだろうか?
- 非行バニー対抗けんちん汁大会
- 地獄なら乳の形状エキサイティング
- おいでやす昼のマミーは性対象
- 飼い犬と草津でコイコイ楽しいな
私にはさっぱりわからない。それぞれ、
- 1582年 太閤検地
- 1597年 慶長の役
- 1603年 徳川家康が征夷大将軍に
- 1932年 五・一五事件
だそうだ。ゴロを覚える方が難しい。
二つめ、
- 泣くよ幼女が平安京
- いい国いい風鎌倉爆風
鳴くよウグイス平安京、いい国つくろう鎌倉幕府、から明らかに後退している。古典のゴロで充分。萌える意味が全く、ない。
本書において、ゴロは肝心要の要素だ。そのゴロがこのお粗末さなのである。もっと真剣に練るべきだろう。ま、とりあえずこんな感じで、という安直さが見えてしまう。少なくともそう感じ取られても仕方がない出来だ。ちなみに私の記憶に残ったのは、帯などで大々的に紹介している「いちごのパンツの煩悩児」のみであった。逆に言えば、このゴロしかPRできるものがなかったのだろう。
次に「萌え」。イラストが何の脈絡もなく並んでいる。27人のイラストレータが好きに書いて寄せ集めましたというだけ。仮にも「一冊の本」として出すからには、何らかのストーリーが要るだろう。
改めて言うが、「ゴロ萌え」という趣旨には大賛成である。なのに本書には「ゴロ」も「萌え」も見当たらないのだ。本としての体裁をなしていないとまで言ってしまおう。手抜きである。手を抜いていないと言われるかもしれないが、出来上がったものは手抜きにしか見えない。本気で「ゴロ萌え」本を作って欲しい。期待が大きかっただけに残念。