型破りの野球マンガ 『ONE OUTS 1』
2017/09/16
ONE OUTS 1 / 甲斐谷忍 / ヤングジャンプコミックス
ひさびさにマンガを読んでみた、『ONE OUTS1/甲斐谷忍/ヤングジャンプコミックス』。いやー面白い。はまっちゃった。本作品は1998年からビジネスジャンプに連載開始。マンガに疎いぼくがそんな旧作を今頃読みだしたのはそれなりのいきさつがあって、それについては後ほど。
野球マンガです。でもただの野球マンガじゃありません。というのもこの作品、「野球はゲームだ」という当たり前のことをテーマに据えているんですね。
従来の野球マンガは、その舞台がプロであれ高校であれ草であれ、ほとんどが人間成長物語です。たまに魔球とかあり得ないパワーも登場しますが、原則成長物語であり、友情だったり根性だったりするわけです。野球は単なる「場」なんですね。本書で描かれる野球は「ゲーム」、そして「ゲームに勝つ」ことです。教育の場でもなければ人間修行の道でもない。
ゲームで一番重要なのはルールです。ルールを知らなければ勝てない。自分に有利なルールを作れればなお良い。ゲームに勝つためには何が必要なのかがその次に来る。だから作者はルールとそのルールにのっとった戦術を徹底的に書き込んでいます。
この第1巻は、主役となる渡久地東亜(とくちトーア)の登場に充てられています。沖縄の米兵の間で行われていた賭野球「ワンアウト」。ピッチャーとバッターの一打席勝負で、飛球が外野まで飛ぶかフォアボールなどで出塁すれば打者の勝ち、それ以外は投手の勝ち。このゲームで勝ち続けるピッチャーが渡久地です。彼はなせ勝ち続けることができるのか。うーん、面白い。
全巻読むことになりそうなので、各巻での気に入ったセリフとコマを拾っていこうかなと。
第1巻のベストセリフ
あんた…俺に野球をナメてるって言ったな
だがな…あんたの方こそ勝負をナメてるよ
渡久地が不運の天才打者児島に向けて放った一言です。
第1巻のベストコマ
渡久地をプロに引き入れるため勝負を挑んだ児島が、無心になろうと薪割り1000本を自分に課します。その1000本目がこの画。読んでるこっちまでウッときちゃった。
さて、『ONE OUTS』を手に取ったいきさつを簡単に。『もっとも美しい数学』を読んでゲーム理論のことをもう少し知ろうと思い、『高校生からのゲーム理論』に手を伸ばしたら「協力ゲーム」に興味が出て、webで「協力ゲーム」を検索したら小島寛之氏の『ライアーゲームっていうのは、要するに協力ゲームなのだ』という記事に出くわして、その記事は当然『LIAR GAME』に触れていて、それで甲斐谷忍が登場して、さらにそこで『ONE OUTS』がお勧めマンガに挙げられていた、という経緯。短縮すれば『ONE OUTS』はゲーム理論マンガと言えるかもしれないね。
しばらく『ONE OUTS』で楽しもうっと。