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こりゃハードボイルドだね 『まほろ駅前多田便利軒』

      2017/09/16

まほろ駅前多田便利軒 / 三浦しをん / 文春文庫
まほろ駅前多田便利軒 (文春文庫)

おそらく瑛太と松田龍平とが主演する映画に影響されて読んだのだろう、女房が面白かったというので、試してみっかと手に取ったのが『まほろ駅前多田便利軒/三浦しをん/文春文庫』。まったく予備知識なしで読み始めたら…、止まらなくなった。これは良質の和製ハードボイルド小説ではないか。

まほろ市は東京のはずれに位置する都南西部最大の町。駅前で便利屋を営む多田啓介のもとに高校時代の同級生・行天春彦がころがりこんだ。ペットあずかりに塾の送迎、納屋の整理etc.――ありふれた依頼のはずがこのコンビにかかると何故かきな臭い状況に。多田・行天の魅力全開の第135回直木賞受賞作。
―「BOOK」データベース

この作品、最初に述べたように和製ハードボイルドなのである。そして背景は「親子」、テーマは「幸福の再生」だ。便利屋稼業からして探偵を置き換えるうってつけの設定。心に傷を追った男が汚れた街を駆け回る。舞台となるまほろ市は町田がモデル。すべてが(もちろん悪も)揃っている街。新宿でも横浜でもない。ニクイ。男達は、舞い込んでくるどこかうさんくさい仕事を、固い信念で鮮やかにさばいていく。カッコイイ。

そんな活劇的なストーリーを展開させつつ、著者は親子のあり方を、そして失った幸せを取り戻す様を丹念に書き込んでいく。さまざまな伏線が、ラストシーンに結実していく過程はほんと上手い。中でも「幸福の再生」のメタファーとなっている行天の小指が強烈な印象を与えている。実に読み応えがあった。

その他、書き方として、ポンポンととぶ時間のつなぎ方や面白い表現も心地良かった。一例に行天の紹介文を書き留めておく。

たとえば宇宙人の侵攻にさらされ、地球を救えるのはきみしかいない、私たちのために戦ってくれ、と世界中の人間から頼まれたとしても、気が乗らなかったら「いやだ」と断れるのが行天だ。

ついでながら、映画は4月23日公開。原作を読んだ後だと、瑛太と松田龍平は結構いいキャストだよなと納得した。

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