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家っていいもんだよね 『家日和』

      2017/09/16

モヤモヤが溜まってきたせいか、なんか無性に晴れやかな小説が読みたくなった。何にしようかなー、と思いめぐらせて行き当たったのは奥田英朗。「うん、こんな時は奥田英朗に限る」って勝手に決めたところで、以前から目を付けていた『家日和/奥田英朗/集英社』を読むことにした。最初に結論を言ってしまうと、目論見通りかなりいい気分になれたのだ。

本作は、そのタイトルどおり家を舞台にした物語。アラフォー夫婦の機微を描いた六つ短編(「サニーデイ」「ここが青山」「家においでよ」「グレープフルーツ・モンスター」「夫とカーテン」「妻と玄米御飯」)が収められている。

さっき書いたように、この短編集とてもいい感じ。そこで、特に良いところを二つ挙げてみようと思う。

まず一つ目。いずれの作品も中年夫婦の日常が変化していくさまを描いていて、3編が夫の側から、3編が妻の側からと書き分けられているのだけれど、その両側ともが同じように面白い。僕は男なので、「ここが青山」「家においでよ」「妻と玄米御飯」の夫の気持ちは身につまされるほどよくわかる。一方、「サニーデイ」「グレープフルーツ・モンスター」「夫とカーテン」を読めば、なるほど女房はそんな感じなのかね、と妙に納得させられる。男はともかく、女房をこんなに上手く書けるとは奥田英朗恐るべしなのである。ま、これは男の側の意見。奥様方はどんな感想を持たれるのだろうか。

二つ目。エンディングの余韻が素敵だ。短編なので、ずっと一緒に暮らしていく夫婦の一時期が切り取られて物語になっているわけだが、そこで描かれた事件が起こる前よりも、その後の方が幸せになるんだろうなってお話だ。そんな二人のこれからがさり気なく伝わってくるエンディング。素敵。

中年の方は読んで損なしの一冊だと思うな。

 

 - 小説, 読書