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ある意味ガリレオシリーズの頂点 『真夏の方程式』

      2017/09/16

真夏の方程式 / 東野圭吾 / 文藝春秋
真夏の方程式

作家25周年記念特別刊行の第2弾にしてガリレオシリーズ最新作長編『真夏の方程式/東野圭吾/文藝春秋』を読み終えた。これまで登場したきら星の東野作品に混じって、本作もある一点において極まったと言える。その一点とは、読後、胸中にサーッと広がる安堵感だ。
例えばガリレオシリーズの長編で見ると、『容疑者Xの献身』『聖女の救済』はそのトリックに心底驚倒させられたが、一方で暗澹とした読後感が残った。それらに比べて今回は、ミステリの部分では控えめになったものの、湯川の解決のなんと素晴らしいことか。安堵、そして希望に満ちている。

内容紹介
両親の都合で、夏休みを伯母一家が経営する旅館で過ごすことになった少年・恭平。その旅館「緑岩荘」は美しい海を誇る玻璃ヶ浦にあった。一方、湯川は海底鉱物資源の開発計画の説明会に招かれ、やはり「緑岩荘」に滞在することとなった。その翌朝、港近くの堤防で男性の変死体が見つかった。男は、もう一人の宿泊客・塚原。これは事故か、殺人か。思わぬ事故に巻き込まれた恭平、環境保護活動にのめりこむ旅館の一人娘・成実、観光業がふるわず廃業を考えるその両親、そして死んだ男はなぜこの町にやってきたのか、湯川が気づいてしまった真相とは――。
特設サイトより

湯川は物語の前半で真相に気づいてしまうのだが、もうそこからはイッキ読みだ。今回は別々に行動することとなった湯川の推理と草薙、内海の捜査が合わさるとき、ようやく読者は事件の全貌を知らされることになる。上では「ミステリの部分では控えめ」などと書いてしまったが、それでも充分驚かされた。最後の1行にたどり着いて、読んでよかったとしみじみ堪能した。

さて、これまで子供嫌いだったはずの湯川が、本作ではちょっと変貌しているが、彼らしいものも含め名台詞が随所に散りばめられている。最後に、僕の選りすぐりの3箇所をピックアップ。

「たぶん無理。学校が始まる直前に、お母さんに叱られながらやるしかない。叱りながらも、お母さんは手伝ってくれるから」
毎年、その手で乗り切ってきたのだ。
そういうのは手伝ったとはいわない。君のお母さんは邪魔をしている。息子の学力向上の邪魔をね

「学者って、いろいろと大変だね」恭平はマスターキーを渡した。
楽をしていては真理を掴めない

「今回のことで君が何らかの答えを出せる日まで、私は君と一緒に同じ問題を抱え悩み続けよう。忘れないでほしい。君は一人ぼっちじゃない

素敵。

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