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『ウイルス・プラネット』 ウイルスはあなたのDNAにも大量に侵入している

      2017/09/16

ウイルス・プラネット / カール・ジンマー(今西康子 訳) / 飛鳥新社ポピュラーサイエンス
ウイルス・プラネット (飛鳥新社ポピュラーサイエンス)

「ウイルス」と聞いて恐怖心を煽られる人は大勢いるに違いない。ぼくがそうだ。AIDS、エボラ出血熱、インフルエンザ、パンデミック、など恐ろしい言葉が連想されるもんだから。一言で表現すれば人類の、いや生物の敵。ところがこれは漠然とした恐怖のイメージを持っているというだけで、実のところウィルスについて詳しいことはほとんど知らない。「ウイルス」って何なのか?

そんなウイルスを面白く真面目に紹介してくるのが『ウイルス・プラネット』 。タイトルの「ウイルス・プラネット」とはもちろん地球のこと。地球はウイルスで満ち溢れているのですよ、ということなのだね。難しい解説書ではなく柔らかいエッセイなので、とても取っつきやすかったのがありがたい。いやー、知らないことばかりでした。

紹介されているのは、地球上を跋扈するタバコモザイクウイルス、ライノウイルス、インフルエンザウイルス、ヒトパピローマウイルス、バクテリオファージ、海洋ウイルス、内在性レトロウイルス、ヒト免疫不全ウイルス、ウェストナイルウイルス、SARSウイルス、エボラウイルス、天然痘ウイルス、ミミウイルスの面々。それらの素性や害や伝搬・感染メカニズムが丁寧に解説されていて、その中には、さらには、

  • 海中にもウイルスはウジャウジャいて、その総重量はシロナガスクジラ7500万頭分(残念なことにシロナガスクジラは7500万頭もいないけど)。
  • 光合成の約10%、すなわち10回呼吸するうちの1回分はウイルス遺伝子によるもの。
  • 人間のゲノムの中には内在性レトロウイルスのDNAが10万個近くあり、ヒトゲノムのおよそ8%を占めている。

なんて驚きの事実がそこかしこに散りばめられている。たまらなく面白くって読み応えあり。これだけウイルスの話を聞かされると、ウイルスと打ち解けたような気になっちゃいました。なもんで、この本を読むと、ウイルスのことをあれこれ考えてしまうんだなあ。

たとえば、ウイルスは生物の細胞に侵入して自分を増殖させるわけだが、なんで増殖しようとするのか、ということ。人間が「少子化対策」とか言うのはなんとなくわかる。数は力だと考えているから。でもウイルスはそんなこと考えちゃいないよなあと思うわけ(これはほとんどすべての生物にも当てはまることだけど)。その増殖手段も「宿主細胞に入り込んで遺伝子を複製する」と簡単に言うけれど、何で自ら細胞に入り込むのか。単なる化学反応なわけないよなあ。何かが「細胞に入り込んでDNA(もしくはRNA)を複製せよ」と指示しているのだろうが、それは何なのか。10個ほどの遺伝子に書き込まれているということ?よくわからん。

またたとえば、細胞がないと増殖できないということは、生物よりも後に誕生した、すくなくとも後に広がったということになる。単純な構造してるくせに出遅れやがって。いや、複雑な生物が誕生してくれたから、自分たちは単純なままやっていけるもん、て戦略なのか。生物の上手を行っているのか?

さらにたとえば、ひょっとしてウイルスは自分に都合のいいように生物を改良しているのかもしれない。どんどんDNAを送り込んで。自分がどんどん変化していくのと併せて、住処も作り替えていく。ウイルス進化論者が「進化は淘汰によるものではなくウイルスが引き起こした感染症」なんて言いたくなる気持ちもわからないでもない。

こんな妄想が次々と湧いてきてしまう。あー、頭の中がゴチャゴチャだ。ウイルスのことをもっと深く知りたくなってきた。

 - 自然科学・応用科学, 読書