ミカンの正しいむき方 『日本世間噺大系』
2017/09/16
ミカンの正しいむき方をご存じだろうか。「皮がはがれればそれでいいだろう。ミカンのむき方に正しいも間違いもない」とお思いの方もいらっしゃるに違いない。ところが「ある」のである。何事にも、たとえ些細なことであろうとも、正しいやり方がちゃんと存在するのである。完全な受け売りになるのだが、その「ミカンの正しいむき方」を伝授しちゃおう。
- へそ(へた)のない方、柔らかい方に親指を入れる
- 三つに割る
- 袋(房)を奥の方から手前にはがす
ここまで来ても、まだ「ホンマかいな?」と怪訝でらっしゃる方がいらっしゃるであろう。ホンマである。このことは『日本世間噺大系/伊丹十三/新潮文庫』にちゃーんと書かれている。そう、元ネタはこの本。伊丹氏が言うのだから間違いない(と信じている)のだ。ミカン作り名人のハツシマさんがそう教えてくれている。
僕は、この本を読んで以来(僕が読んだのは昭和54年刊の文春文庫である)32年間、この「ミカンの正しいむき方」を続けている。実に食べやすい。そしてとてもおいしく食べられることは保証する。
さて、この『日本世間噺大系』は伊丹十三のエッセンスがつまったエッセイ集。僕の大のお気に入りの一冊だ。プレーン・オムレツの作り方や塩田における塩の作り方も解説されている。中でも、飛行機に慌ただしく乗り降りする男を描いた「走る男」は秀作だ。そう、本書におよばず僕は伊丹十三の大ファンでなのである。本も映画も。『女たちよ!』『再び女たちよ!』などについてもそのうち書ければと思っている。